御主人様と愛奴 変態の日々の記録
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Author:愛奴
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またSMに嫌悪感をお持ちの方は閲覧をお控え下さい。
自己責任の元での閲覧をお願い致します。
御主人様の愛奴です。
お初の方は「はじめに」をご参照下さい。
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私からのお返事のみ掲載させて頂きますので、SMに興味のある方もノーマルの方も、皆様お気軽に足跡を残して下さると嬉しいです。
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ドアの傍にあった姿見の中に映し出されたのは、金属の首輪と手枷、ガーターストッキングだけを身に付けた愛奴の姿。
それは私が見た事もないような顔をしていて、無意識に目を背けていました。
けれどそんな私を御主人様が見逃す筈はありません。
後ろから強く乳房を掴まれ、鏡の中の愛奴に語りかけられます。
「痛いけれど気持ちが良いでしょう?」
「自分の姿をきちんと見なさい」
「お前は雌なのです」
御主人様の御言葉通り、その手に乳房を潰されている愛奴は恍惚の表情をしている…。
痛いけれどそれは問題じゃない。
背中やお尻に感じる御主人様の感覚が嬉しくて仕方がない。
私は鏡の中の自分が恥ずかしくて居た堪れなくて。
けれど髪を乱して悦んでいる姿を、心の隅で客観的に眺めていました。
私はこんな顔をして御主人様の前にいるのだと。
そんな私に、鏡に手を付いて前傾になるようにと指示をされる御主人様。
けれど目の前にある姿見には指紋一つ付いていません。
私はなるべく汚さないようにと、鏡面に軽く手を添えて、自分でその姿勢を支えました。
しかしそんな事は全くの無駄だったのです。
後ろから差し出された御主人様の指が、御奉仕で溢れ出した愛液の滑りを利用して、ゆるゆるとクリトリスを刺激して下さいます。
御主人様がおまんこに触れて下さっている...!
嬉しい...!
余りの悦びに私の足腰は痙攣を始め、立っているのがやっと。
せっかくの磨かれた鏡面は、私の掌と額に密着され、すっかり曇ってしまっていました。
「動かないように」
「きちんと自分の顔を見なさい」
鏡に縋り付いた私が顔を上げると、目の前には唾液をぼたぼたと垂らしている乱れ髪の愛奴の姿。
けれどそんな事に構っている余裕はありません。
追い立てるように愛液に塗れた御主人様の指が、私の中へと侵入して来たのです。
夢を見ているのかと想う程に脳内が混乱して、まともに立っている事すら出来ない。
ゆっくりと膣内を動く御主人様の指が、的確に私を捉えて離さない。
がくがくと痙攣する金属の手枷が鏡面とぶつかり、耳障りな音を立てていました。
このままでは鏡が傷付いてしまう…。
そう頭では解っていましたが、今にも絶頂に達する寸前の私は、そこに縋り付く事しか出来ませんでした。
「きちんと立ちなさい」
叩かれるお尻の痛みと御主人様の指。
そこだけクリアな感覚に、嬉しさだけで逝ってしまいそう…。
快楽と幸福感に溺れている私は、何をどうしたらいいのか、すっかり思考する事を放棄してしまっていました。
「こっちへ来なさい」
今度はベッドの方へと、愛奴を連れ戻される御主人様。
けれど引き抜かれた指に腰が砕けそうになった私は、よろけて御主人様にぶつかってしまいました。
まともに歩けない私がもどかしかったのか、御主人様は私の首にぐるっと回し、そのまま愛奴を引き摺ると、ベッドへと放り出されてしまいました。
見事に転がった私は、両手が繋がっているせいでまた直ぐに起き上がれません。
私が何とか体勢を整えている間に、先程と同じように寛がれていた御主人様。
起き上がった私を確認すると、先程と同じ御命令をされました。
「しゃぶりなさい」、と。
蕩けている頭を必死に起こしながら、先程と同じようにゆっくりと舌を這わせます。
違っていたのは、口内に広がる大好きな味。
御主人様も興奮して下さっているのだという事実を悦びながら、その限界が近いのではないかと想像していました。
「おまんこを使って欲しいのでしょう?」
頭の上から降り注ぐ優しい声色。
私は愛しいペニスを口いっぱいに頬張ったまま、ふんふんと鼻を鳴らしてお返事しました。
けれどそのお返事は相応しくなかったよう。
「声に出して言いなさい」
「何度も言いなさい」
「言いながらしゃぶりなさい」
御主人様の低い声が、強い拘束力を持って私を射抜きます。
私は言葉になっていない言葉を発しながら、過ぎた願いを自分の中で反芻していました。
おまんこを使って頂きたい。
それは前回の私の望みだったかもしれません。
けれどそれは、願う事を赦されない愛奴の願い。
それを決めるのは御主人様であるし、私が自ら望む事は決して有り得ない。
それなのに。
言葉にする事を赦された私は、十字架を背負うような気持ちでその言葉を繰り返し御主人様に訴えました。
それは私が見た事もないような顔をしていて、無意識に目を背けていました。
けれどそんな私を御主人様が見逃す筈はありません。
後ろから強く乳房を掴まれ、鏡の中の愛奴に語りかけられます。
「痛いけれど気持ちが良いでしょう?」
「自分の姿をきちんと見なさい」
「お前は雌なのです」
御主人様の御言葉通り、その手に乳房を潰されている愛奴は恍惚の表情をしている…。
痛いけれどそれは問題じゃない。
背中やお尻に感じる御主人様の感覚が嬉しくて仕方がない。
私は鏡の中の自分が恥ずかしくて居た堪れなくて。
けれど髪を乱して悦んでいる姿を、心の隅で客観的に眺めていました。
私はこんな顔をして御主人様の前にいるのだと。
そんな私に、鏡に手を付いて前傾になるようにと指示をされる御主人様。
けれど目の前にある姿見には指紋一つ付いていません。
私はなるべく汚さないようにと、鏡面に軽く手を添えて、自分でその姿勢を支えました。
しかしそんな事は全くの無駄だったのです。
後ろから差し出された御主人様の指が、御奉仕で溢れ出した愛液の滑りを利用して、ゆるゆるとクリトリスを刺激して下さいます。
御主人様がおまんこに触れて下さっている...!
嬉しい...!
余りの悦びに私の足腰は痙攣を始め、立っているのがやっと。
せっかくの磨かれた鏡面は、私の掌と額に密着され、すっかり曇ってしまっていました。
「動かないように」
「きちんと自分の顔を見なさい」
鏡に縋り付いた私が顔を上げると、目の前には唾液をぼたぼたと垂らしている乱れ髪の愛奴の姿。
けれどそんな事に構っている余裕はありません。
追い立てるように愛液に塗れた御主人様の指が、私の中へと侵入して来たのです。
夢を見ているのかと想う程に脳内が混乱して、まともに立っている事すら出来ない。
ゆっくりと膣内を動く御主人様の指が、的確に私を捉えて離さない。
がくがくと痙攣する金属の手枷が鏡面とぶつかり、耳障りな音を立てていました。
このままでは鏡が傷付いてしまう…。
そう頭では解っていましたが、今にも絶頂に達する寸前の私は、そこに縋り付く事しか出来ませんでした。
「きちんと立ちなさい」
叩かれるお尻の痛みと御主人様の指。
そこだけクリアな感覚に、嬉しさだけで逝ってしまいそう…。
快楽と幸福感に溺れている私は、何をどうしたらいいのか、すっかり思考する事を放棄してしまっていました。
「こっちへ来なさい」
今度はベッドの方へと、愛奴を連れ戻される御主人様。
けれど引き抜かれた指に腰が砕けそうになった私は、よろけて御主人様にぶつかってしまいました。
まともに歩けない私がもどかしかったのか、御主人様は私の首にぐるっと回し、そのまま愛奴を引き摺ると、ベッドへと放り出されてしまいました。
見事に転がった私は、両手が繋がっているせいでまた直ぐに起き上がれません。
私が何とか体勢を整えている間に、先程と同じように寛がれていた御主人様。
起き上がった私を確認すると、先程と同じ御命令をされました。
「しゃぶりなさい」、と。
蕩けている頭を必死に起こしながら、先程と同じようにゆっくりと舌を這わせます。
違っていたのは、口内に広がる大好きな味。
御主人様も興奮して下さっているのだという事実を悦びながら、その限界が近いのではないかと想像していました。
「おまんこを使って欲しいのでしょう?」
頭の上から降り注ぐ優しい声色。
私は愛しいペニスを口いっぱいに頬張ったまま、ふんふんと鼻を鳴らしてお返事しました。
けれどそのお返事は相応しくなかったよう。
「声に出して言いなさい」
「何度も言いなさい」
「言いながらしゃぶりなさい」
御主人様の低い声が、強い拘束力を持って私を射抜きます。
私は言葉になっていない言葉を発しながら、過ぎた願いを自分の中で反芻していました。
おまんこを使って頂きたい。
それは前回の私の望みだったかもしれません。
けれどそれは、願う事を赦されない愛奴の願い。
それを決めるのは御主人様であるし、私が自ら望む事は決して有り得ない。
それなのに。
言葉にする事を赦された私は、十字架を背負うような気持ちでその言葉を繰り返し御主人様に訴えました。
手枷の螺を締め終わった御主人様は、私に向かって大きな掌を差し出されました。
私はその意味が瞬時に理解出来ず、頭の中にクエスチョンマークが浮かびます。
御主人様が私に何か求められている...。
それだけしか理解出来ない馬鹿な愛奴は、とにかく行動しなければと想い、その重い手首をそっと持ち上げました。
「お手」...かな...?
差し出された御主人様の掌の上に、手枷の付いた重い手を重ねようとしたその時。
愛奴の勘が電流のように身体の中を駆け抜け、急いで絨毯を蹴り立ち上がりました。
今、御主人様が求められている物。
御主人様がいつもお傍に置いておかれたい物。
私はローテーブルの上にあったお酒と煙草を掴むと、ベッドサイドへとセッティングし直しました。
その勢いで、椅子に掛けていたスラックスとネクタイを急いでクローゼットへ仕舞うと、いつもより分厚い封筒を持って、御主人様の元へ戻ったのです。
御主人様は封筒を受け取ると、御自身で下着を脱がれました。
そこから飛び出したのは、私が布越しに見ていた通りの愛しいペニス。
毎度の事ではあるのですが、下着から出て来る瞬間は、いつもその立派さに驚いてしまいます。
「しっかりしゃぶりなさい」
そう仰り、封筒の中身を数え始められる御主人様。
私は色んな事が嬉しくて堪らなくて、いつものように丁寧に御奉仕出来ないでいました。
「お前が稼いできた大切な金銭なので、一枚一枚数えるのが好きですよ」
少し前に、御主人様が私に下さった御言葉。
それが余りにも嬉しくて。
私が御主人様の為に風俗で稼いで来る事を悦んで下さっている事は知っていましたが、そこまで考えて下さっているとは露知らず...。
そんな風に想っていて下さったのだと、凄く凄く胸が熱くなりました。
私はその事を心に浮かべながら口内を動かし、頭上から聞こえてくる紙幣の擦れる音を聞いていました。
紙幣を数え終わられた御主人様は、静かに立ち上がってベッドから下りられます。
こっちに来なさいと私に声を掛けて下さいますが、両手が繋がっているので、上手く身体を起こす事が出来ません。
やっとの事でベッドから下りると、首輪に付いている輪に指を掛けられ、お部屋に備え付けてある姿見の前まで引っ張って行かれました。
その扱いと強引な御主人様に、私の被虐心が疼きます。
普段はとっても優しくて、時々意地悪な御主人様。
けれど調教時には息を呑む程の空気を纏われ、何もかもが支配されてしまう。
きっとこの喉元に手を掛けられても、私は悦んでそれを受け入れるでしょう。
御主人様の手で終わりを迎えられるなら、それ以上に幸せな事なんて何もないのですから。
私はその意味が瞬時に理解出来ず、頭の中にクエスチョンマークが浮かびます。
御主人様が私に何か求められている...。
それだけしか理解出来ない馬鹿な愛奴は、とにかく行動しなければと想い、その重い手首をそっと持ち上げました。
「お手」...かな...?
差し出された御主人様の掌の上に、手枷の付いた重い手を重ねようとしたその時。
愛奴の勘が電流のように身体の中を駆け抜け、急いで絨毯を蹴り立ち上がりました。
今、御主人様が求められている物。
御主人様がいつもお傍に置いておかれたい物。
私はローテーブルの上にあったお酒と煙草を掴むと、ベッドサイドへとセッティングし直しました。
その勢いで、椅子に掛けていたスラックスとネクタイを急いでクローゼットへ仕舞うと、いつもより分厚い封筒を持って、御主人様の元へ戻ったのです。
御主人様は封筒を受け取ると、御自身で下着を脱がれました。
そこから飛び出したのは、私が布越しに見ていた通りの愛しいペニス。
毎度の事ではあるのですが、下着から出て来る瞬間は、いつもその立派さに驚いてしまいます。
「しっかりしゃぶりなさい」
そう仰り、封筒の中身を数え始められる御主人様。
私は色んな事が嬉しくて堪らなくて、いつものように丁寧に御奉仕出来ないでいました。
「お前が稼いできた大切な金銭なので、一枚一枚数えるのが好きですよ」
少し前に、御主人様が私に下さった御言葉。
それが余りにも嬉しくて。
私が御主人様の為に風俗で稼いで来る事を悦んで下さっている事は知っていましたが、そこまで考えて下さっているとは露知らず...。
そんな風に想っていて下さったのだと、凄く凄く胸が熱くなりました。
私はその事を心に浮かべながら口内を動かし、頭上から聞こえてくる紙幣の擦れる音を聞いていました。
紙幣を数え終わられた御主人様は、静かに立ち上がってベッドから下りられます。
こっちに来なさいと私に声を掛けて下さいますが、両手が繋がっているので、上手く身体を起こす事が出来ません。
やっとの事でベッドから下りると、首輪に付いている輪に指を掛けられ、お部屋に備え付けてある姿見の前まで引っ張って行かれました。
その扱いと強引な御主人様に、私の被虐心が疼きます。
普段はとっても優しくて、時々意地悪な御主人様。
けれど調教時には息を呑む程の空気を纏われ、何もかもが支配されてしまう。
きっとこの喉元に手を掛けられても、私は悦んでそれを受け入れるでしょう。
御主人様の手で終わりを迎えられるなら、それ以上に幸せな事なんて何もないのですから。
お部屋に到着した御主人様と私と、引き摺られて来たスーツケース。
お預かりしていたコートを名残惜しくクローゼットに掛けてそのお傍へ向かうと、御主人様は私に向かってすっと背中を向けられました。
丁度、目線の高さにある、御主人様のスーツの襟元。
その身長差に異様に胸が高鳴ってしまった私は、動揺を誤魔化そうとして、背が伸びましたかと馬鹿な質問をしてしまいました。
「伸びる訳ないでしょう」と笑って下さる御主人様。
ますます胸が高鳴ってしまう私は、その背中からジャケットを預かると、そそくさとクローゼットへ向かいました。
その間にベッドに腰掛けられた御主人様。
窮屈な革靴を脱がれたいのだろうという事は、馬鹿な私にも流石に判ります。
クローゼットの扉を閉めた流れでその足元に座った私は、御主人様の足にぴったりの革靴を優しく引っ張りました。
けれど余りに丁度良いサイズの磨かれた靴は、いつものようになかなか脱がされてくれません。
私が革靴と格闘していると、ふとワンピースの裾を捲られ、下着を着けていないお尻をばちんと叩かれてしまいました。
御主人様は細身でいらっしゃいますが、その手は大きくて分厚い。
じんじんとする痛みに、その手の感触を感じられた事が嬉しくて。
しかめた顔とは反対の感情に満たされていました。
「靴を脱がせたら首輪を取りなさい」
それはとても嬉しい御命令。
何とか脱げた革靴を揃え、座ったまま絨毯の上を移動した私は、スーツケースから取り出した首輪を御主人様にお渡ししました。
ベルベットの巾着から取り出された、鈍く光る金属の首輪。
留金を外して広げた首輪を前に、「嵌められに来なさい」と御主人様が仰います。
私はベッドぎりぎりまで身体を前にずらし、開かれた首輪の中に自分の首が収まるよう、ぐっと顔を前に突き出しました。
かちんと音を立てる冷たい感触。
留金を差し込む御主人様の手の温かさ。
重い首輪に込められた想いを感じるこの瞬間は、いつも充足感に満たされています。
私に首輪を付けると、すっとベッドから立ち上がられる御主人様。
ジャケットを脱いだだけのその御姿から、次に自分がしなければならない事を察した私は、その足元から立ち上がり、ワイシャツの襟元へと手を伸ばしました。
前回、教えて頂いたネクタイの外し方。
私が想像していたよりもしっかりと締まっていて、お手伝いして頂いた事を想い出します。
今度はちゃんと出来るかな…。
前回よりも強めに引っ張ったそれは、するすると衣擦れの音を立てて、スムーズに一本のネクタイへとその形を変えました。
そうして次の御命令に従い、絨毯の上に跪いた私の顔の前に現れたのは、御主人様のお悦びを表す膨らみ。
私はいつものように心の中で歓喜し、革のベルトを外して行きました。
スラックスの下から見える下着は、更に大きくその膨らみを主張しています。
御主人様の脚にスラックスを滑らせると、自分の背後にあった椅子の背もたれに、ネクタイとそれを合わせて掛けました。
本当は皺にならないよう、綺麗にハンガーに掛けておきたいのですが…。
御主人様が調教中のそれを好まれない事を知っている私は、極力皺にならないよう、羽衣を扱うようにスラックスとネクタイを休ませました。
ベッドに向き直った私が見たのは、御主人様の手に取られた金属の手枷。
久しぶりに見たそのお道具の重量を想い出し、きゅっと胸が竦みます。
「これを付けたら服が脱げませんね?
早く脱ぎなさい」
ガーターストッキングはそのままでという御命令通り、急いでワンピースを脱いだ私は、それだけしか身に付けていない姿で御主人様の足元に座り直しました。
何度繰り返しても、この瞬間は恥ずかしくて堪らない...。
御主人様にとっては、目新しくもない身体に違いないのに。
私は隠れない身体を少しでも隠そうと、両手両脚を体側にぴったりとくっつけていました。
そんな私を御存知なのでしょう。
陽の光に晒された乳房を痛いくらいにぎゅっと掴んだ御主人様は、恥じらい等必要ないのだと言い聞かせるように、私に魔法の囁きを下さいます。
「雌になりなさい」
その御言葉は低く、優しく。
けれど私の芯に刺さるよう、絶対的な支配力を湛えていました。
私はぎゅっとくっ付けていた両腕を身体から離し、御主人様の前にゆっくりと手首を差し出します。
まるで逮捕される事を観念した犯人かのように。
ずっしりとした金属の手枷が私の体温と交わって行くのを、締められる金具をぼんやりと見つめながら感じていました。
私は365日24時間、こうして御主人様に囚われているのです。
お預かりしていたコートを名残惜しくクローゼットに掛けてそのお傍へ向かうと、御主人様は私に向かってすっと背中を向けられました。
丁度、目線の高さにある、御主人様のスーツの襟元。
その身長差に異様に胸が高鳴ってしまった私は、動揺を誤魔化そうとして、背が伸びましたかと馬鹿な質問をしてしまいました。
「伸びる訳ないでしょう」と笑って下さる御主人様。
ますます胸が高鳴ってしまう私は、その背中からジャケットを預かると、そそくさとクローゼットへ向かいました。
その間にベッドに腰掛けられた御主人様。
窮屈な革靴を脱がれたいのだろうという事は、馬鹿な私にも流石に判ります。
クローゼットの扉を閉めた流れでその足元に座った私は、御主人様の足にぴったりの革靴を優しく引っ張りました。
けれど余りに丁度良いサイズの磨かれた靴は、いつものようになかなか脱がされてくれません。
私が革靴と格闘していると、ふとワンピースの裾を捲られ、下着を着けていないお尻をばちんと叩かれてしまいました。
御主人様は細身でいらっしゃいますが、その手は大きくて分厚い。
じんじんとする痛みに、その手の感触を感じられた事が嬉しくて。
しかめた顔とは反対の感情に満たされていました。
「靴を脱がせたら首輪を取りなさい」
それはとても嬉しい御命令。
何とか脱げた革靴を揃え、座ったまま絨毯の上を移動した私は、スーツケースから取り出した首輪を御主人様にお渡ししました。
ベルベットの巾着から取り出された、鈍く光る金属の首輪。
留金を外して広げた首輪を前に、「嵌められに来なさい」と御主人様が仰います。
私はベッドぎりぎりまで身体を前にずらし、開かれた首輪の中に自分の首が収まるよう、ぐっと顔を前に突き出しました。
かちんと音を立てる冷たい感触。
留金を差し込む御主人様の手の温かさ。
重い首輪に込められた想いを感じるこの瞬間は、いつも充足感に満たされています。
私に首輪を付けると、すっとベッドから立ち上がられる御主人様。
ジャケットを脱いだだけのその御姿から、次に自分がしなければならない事を察した私は、その足元から立ち上がり、ワイシャツの襟元へと手を伸ばしました。
前回、教えて頂いたネクタイの外し方。
私が想像していたよりもしっかりと締まっていて、お手伝いして頂いた事を想い出します。
今度はちゃんと出来るかな…。
前回よりも強めに引っ張ったそれは、するすると衣擦れの音を立てて、スムーズに一本のネクタイへとその形を変えました。
そうして次の御命令に従い、絨毯の上に跪いた私の顔の前に現れたのは、御主人様のお悦びを表す膨らみ。
私はいつものように心の中で歓喜し、革のベルトを外して行きました。
スラックスの下から見える下着は、更に大きくその膨らみを主張しています。
御主人様の脚にスラックスを滑らせると、自分の背後にあった椅子の背もたれに、ネクタイとそれを合わせて掛けました。
本当は皺にならないよう、綺麗にハンガーに掛けておきたいのですが…。
御主人様が調教中のそれを好まれない事を知っている私は、極力皺にならないよう、羽衣を扱うようにスラックスとネクタイを休ませました。
ベッドに向き直った私が見たのは、御主人様の手に取られた金属の手枷。
久しぶりに見たそのお道具の重量を想い出し、きゅっと胸が竦みます。
「これを付けたら服が脱げませんね?
早く脱ぎなさい」
ガーターストッキングはそのままでという御命令通り、急いでワンピースを脱いだ私は、それだけしか身に付けていない姿で御主人様の足元に座り直しました。
何度繰り返しても、この瞬間は恥ずかしくて堪らない...。
御主人様にとっては、目新しくもない身体に違いないのに。
私は隠れない身体を少しでも隠そうと、両手両脚を体側にぴったりとくっつけていました。
そんな私を御存知なのでしょう。
陽の光に晒された乳房を痛いくらいにぎゅっと掴んだ御主人様は、恥じらい等必要ないのだと言い聞かせるように、私に魔法の囁きを下さいます。
「雌になりなさい」
その御言葉は低く、優しく。
けれど私の芯に刺さるよう、絶対的な支配力を湛えていました。
私はぎゅっとくっ付けていた両腕を身体から離し、御主人様の前にゆっくりと手首を差し出します。
まるで逮捕される事を観念した犯人かのように。
ずっしりとした金属の手枷が私の体温と交わって行くのを、締められる金具をぼんやりと見つめながら感じていました。
私は365日24時間、こうして御主人様に囚われているのです。
調教日の前日。
体調が優れないとの御主人様からのメール。
心配で仕方がなかったので、私の事は構いませんから病院に行かれて下さいとお願いしていました。
けれど大丈夫だと繰り返される御主人様の中には、病院に行くという選択肢はない様子。
私は御主人様の判断にお任せし、いつも通りに飛行機に乗り込もうと思っていました。
もし当日に体調が回復されず、お逢い出来る時間が短くなっても。
例えお逢いする事が叶わなくても。
御主人様の体調が何よりも大切。
そう想い、私は最悪の事態を想定しながら、いつもよりもスムーズに眠りにつきました。
調教日の朝、やはり大丈夫だと仰る御主人様。
その体調が本当に大丈夫なのか、私には知る術はありません。
御主人様のお顔をちゃんと見て、お逢いしてからどうするか考えよう。
きっと御主人様は大丈夫だとしか仰らないだろうから。
体調管理も愛奴の努めだと想い、私はいつも通りに空港へと向かいました。
少し遅れてしまった飛行機。
先に待ち合わせ場所に到着された御主人様。
「いつもの店に入りました」とのメールに、急ぎ足で向かう私。
お店の中に入った瞬間、その御姿を見つけて安心した私は、真っ直ぐに御主人様の向かいの席へと向かいました。
けれどお仕事に集中されている御主人様は、私が来た事に気が付かれていません。
お待たせしましたと声をお掛けし、その向かいに腰を下ろしました。
そんな私を確認した御主人様は、そのままお仕事を続けていらっしゃいます。
お顔色は悪くない。
お仕事もしっかりしていらっしゃる様子。
想っていたよりも体調が良さそうで少しだけ安心した私は、御主人様のお仕事が落ち着くまでその様子を静かに見守っていました。
一段落されたのか、お仕事道具を仕舞い、私の顔を見てメニューを差し出される御主人様。
体調は昨日よりも落ち着かれたとの事で、いつものように優しい笑顔を見せて下さいました。
もちろん本調子ではないのかもしれませんが、我慢をされている様子も、無理をされている様子もありません。
私は御主人様の様子を時折観察しながら、運ばれて来たお料理をお皿へと取り分けます。
何気ない会話。
よく笑って下さる御主人様。
最近はまた特にお忙しそうだったので、疲れが溜まっているのではないかと心配ばかりしていましたが。
私が想っていたよりお元気そうな様子で、私も嬉しくなって食事を愉しみました。
食事を終えた御主人様と私は、ホテルのフロントへ移動し、チェックインの手続きを行います。
ホテルを探すのも、予約をするのも、チェックインをするのも全て愛奴の役目。
書類にサインをする私の横で、御主人様はホテルのパンフレットを見ながら、載っている動物の写真に興味津々のご様子。
それが何だかとても可愛らしくて。
お元気な御主人様の御姿に、幸せな気分になっていました。
今回は事前にホテルに送っておいたスーツケース。
たまに空港で開けなければいけない事態に陥るので、それを避ける為の対策を講じてみたのです。
それに体力のない私にとっては、重い荷物に振り回されずに済む良策。
もっと早くこうすれば良かったと御主人様とお話していた程でした。
暫く待っていると、送付しておいたスーツケースをフロントの方が持って来て下さいます。
それは運送会社の大きなビニールに包まれていて、タイヤまで覆われてしまい、なかなかスムーズに運ぶ事が出来ません。
その不自由さと重さに一人で振り回されていると、数歩先を歩かれていた御主人様が、ご自分のコートを私に預けてこられました。
そして何も言わず私から持ち手を奪い取ると、ビニールに包まれてタイヤの動かないまま、スーツケースを引き摺って行かれたのです。
絨毯の上を滑って行く、タイヤの動かないスーツケース。
どんどんと歩いて行かれる御主人様。
その少し可笑しな光景に、私は御主人様の優しさと力強さを感じて。
お預かりしたコートの匂いに包まれながら、こっそりと暖かい気持ちになっていました。
体調が優れないとの御主人様からのメール。
心配で仕方がなかったので、私の事は構いませんから病院に行かれて下さいとお願いしていました。
けれど大丈夫だと繰り返される御主人様の中には、病院に行くという選択肢はない様子。
私は御主人様の判断にお任せし、いつも通りに飛行機に乗り込もうと思っていました。
もし当日に体調が回復されず、お逢い出来る時間が短くなっても。
例えお逢いする事が叶わなくても。
御主人様の体調が何よりも大切。
そう想い、私は最悪の事態を想定しながら、いつもよりもスムーズに眠りにつきました。
調教日の朝、やはり大丈夫だと仰る御主人様。
その体調が本当に大丈夫なのか、私には知る術はありません。
御主人様のお顔をちゃんと見て、お逢いしてからどうするか考えよう。
きっと御主人様は大丈夫だとしか仰らないだろうから。
体調管理も愛奴の努めだと想い、私はいつも通りに空港へと向かいました。
少し遅れてしまった飛行機。
先に待ち合わせ場所に到着された御主人様。
「いつもの店に入りました」とのメールに、急ぎ足で向かう私。
お店の中に入った瞬間、その御姿を見つけて安心した私は、真っ直ぐに御主人様の向かいの席へと向かいました。
けれどお仕事に集中されている御主人様は、私が来た事に気が付かれていません。
お待たせしましたと声をお掛けし、その向かいに腰を下ろしました。
そんな私を確認した御主人様は、そのままお仕事を続けていらっしゃいます。
お顔色は悪くない。
お仕事もしっかりしていらっしゃる様子。
想っていたよりも体調が良さそうで少しだけ安心した私は、御主人様のお仕事が落ち着くまでその様子を静かに見守っていました。
一段落されたのか、お仕事道具を仕舞い、私の顔を見てメニューを差し出される御主人様。
体調は昨日よりも落ち着かれたとの事で、いつものように優しい笑顔を見せて下さいました。
もちろん本調子ではないのかもしれませんが、我慢をされている様子も、無理をされている様子もありません。
私は御主人様の様子を時折観察しながら、運ばれて来たお料理をお皿へと取り分けます。
何気ない会話。
よく笑って下さる御主人様。
最近はまた特にお忙しそうだったので、疲れが溜まっているのではないかと心配ばかりしていましたが。
私が想っていたよりお元気そうな様子で、私も嬉しくなって食事を愉しみました。
食事を終えた御主人様と私は、ホテルのフロントへ移動し、チェックインの手続きを行います。
ホテルを探すのも、予約をするのも、チェックインをするのも全て愛奴の役目。
書類にサインをする私の横で、御主人様はホテルのパンフレットを見ながら、載っている動物の写真に興味津々のご様子。
それが何だかとても可愛らしくて。
お元気な御主人様の御姿に、幸せな気分になっていました。
今回は事前にホテルに送っておいたスーツケース。
たまに空港で開けなければいけない事態に陥るので、それを避ける為の対策を講じてみたのです。
それに体力のない私にとっては、重い荷物に振り回されずに済む良策。
もっと早くこうすれば良かったと御主人様とお話していた程でした。
暫く待っていると、送付しておいたスーツケースをフロントの方が持って来て下さいます。
それは運送会社の大きなビニールに包まれていて、タイヤまで覆われてしまい、なかなかスムーズに運ぶ事が出来ません。
その不自由さと重さに一人で振り回されていると、数歩先を歩かれていた御主人様が、ご自分のコートを私に預けてこられました。
そして何も言わず私から持ち手を奪い取ると、ビニールに包まれてタイヤの動かないまま、スーツケースを引き摺って行かれたのです。
絨毯の上を滑って行く、タイヤの動かないスーツケース。
どんどんと歩いて行かれる御主人様。
その少し可笑しな光景に、私は御主人様の優しさと力強さを感じて。
お預かりしたコートの匂いに包まれながら、こっそりと暖かい気持ちになっていました。
それぞれに身支度を始めた御主人様と私。
開いただけで中身を使わなかったスーツケースのジッパーを閉じながら、使用して頂いた穴は一つだけだったなと想い返していました。
けれどそれは葛藤や落胆ではなく。
御主人様のお気持ちのままに在る事が私の悦びであるのだから、その事実を当然の事として受け入れられるようになりたいという素直な想いでした。
今はまだそうなれず、今日も私の感情は嵐のように忙しく表情を変え続けていましたから。
何度決意をしても、なかなかそこには辿り着けない。
そんな自分を十分過ぎる程に理解している私は、呆れた小さな笑いを心の中で繰り返しながら、クローゼットから取り出したジャケットとコートを御主人様の背中に掛けました。
うなじから見えるお顔色も悪くないし、お疲れになっている様子もない。
御主人様がお元気である事を確認した私は、元通りに閉じたスーツケースを引き、その背中に続いてお部屋を後にしました。
荷物をホテルのフロントに預けて身軽になった私は、ようやく御主人様の腕に掴まります。
いつものように引き摺られるように歩きながら、相変わらず人の多い電車へと乗り込みました。
御主人様と一緒に座れる事は殆どないのですが、この時は久しぶりに並んで座る事が出来たのです。
狭い座席に、体の側面が御主人様に触れている…。
それだけでも嬉しくて堪らないのに、御主人様は電車の揺れに任せて、そのまま私に体重を預けてこられました。
その幸福感に、くすくすと小さく笑う私。
愛おしい…愛おしくて愛おしくて堪らない。
このままずっと電車が走り続けてくれたらいいのに…。
満員電車の中での密かな御主人様とのやりとりは、余りの愛おしさに私を押し潰してしまいそうでした。
けれど毎度の私の願いは叶う筈もなく、人の流れと共にホームへと押し出されて行きます。
歩くのが速い御主人様。
歩くのが極端に遅い私。
直ぐに広がってしまうその距離感を知っている御主人様は、何度も振り返っては、私がついて来ているかを確認して下さいます。
けれど私が御主人様の腕に掴まるより早く御主人様は歩き出されてしまうので、その行動は幾度となく繰り返されていました。
空港に到着した御主人様と私。
いつものように食事をしながら、色んなお話をして下さる御主人様。
博学な御主人様は、私の知らない事を沢山御存知で。
御主人様の事を尊敬する一方で、如何に自分の見て来た世界が小さかったのか、自分の視野の狭さを痛感する。
それはいつもの事なのですが、この時の私はいつも以上にひねくれてしまっていました。
御主人様が私に色んな事を教えて下さる。
嬉しい。
御主人様が見ていらっしゃる世界を私に教えて下さる事が嬉しい。
御主人様はやっぱり凄い。
凄い…。
けれど...。
私はその隣には並べない。
愛奴なのだから隣に並びたいだなんて烏滸がましい。
それは当然の事。
当然の事なのだけれど…。
「ああ、そうか…私は御主人様の隣に並びたかったんだ…」
そう自分の心と向き合ってしまった私には、メニューを相談して下さっている御主人様の言葉が頭に入って来ません。
こんな事を想ってしまう事自体、馬鹿げている。
スーツケースを閉じる時にも、その御心のままに在りたいと望んだばかりなのに。
御主人様の何気ない御言葉一つで、私の心はまた大嵐となっていたのです。
「形式的なものばかりに目を向けていると、足元の大事なものが見えなくなる。
私の心を独占しておいて、その他に何を独占したいと望むのか」
御主人様に見つけて頂いて間もない頃。
まだそのお考えをきちんと理解出来ずにきゃんきゃんと鳴き喚いていた頃に頂いた御言葉。
その時の私にはよく理解出来なかったけれど、こうして行き詰まった時には必ず想い出して、御主人様の御心の下にある自分という物を見つめ直します。
私は何処まで行っても馬鹿で仕方なくて、直ぐにその行き先を見失ってしまいがちですから。
御主人様の御言葉は、全て御主人様からの教え。
その御心の通り、御主人様はいつもいつでも私を大事にして下さっている。
それが違った事等、唯の一度もない。
そう解っているからこそ、そう在れない自分が苦しくて堪らなくて。
ぐっとこみ上げてくる物を一旦落ち着かせようと、トイレに行こうかと想った時。
「ぼうっとしてどうしたのですか」
ろくに返事もしない愛奴に、御主人様がこちらを見ていらっしゃいました。
私はポーカーフェイスが出来る程、大人ではありませんし、それが御主人様の前なら尚の事。
けれど指摘される程の表情をしていたのかと驚いた私は、溢れる寸前だった気持ちをぐっと飲み込みます。
せっかくの御主人様との時間を壊してはいけない。
御主人様に悦んで頂く事が、愛奴である私の努めなのだから。
せめてそれくらいは出来る愛奴であろうと、必死に自分をコントロールしていました。
けれど御主人様はそんな愛奴に気が付かれていたのかもしれません。
食事を終え、後ろをちょこまかとついて来る私に、立ち止まってその腕を差し出して下さったのです。
見えているのは御主人様の背中と、私が掴まりやすいように軽く曲げられた右腕。
真っ直ぐ正面を見据えていらっしゃる御主人様は、まるでバージンロードか何かのよう。
初めて見る光景に驚き、悦び、私はその優しさが嬉しくて、苦しくて。
おもいきり飛びついてはしゃぐ愛奴の太腿を優しく叩きながら、御主人様と私は手荷物検査場へと歩いて行きました。
あっという間に迫る時間。
いつもは検査場のだいぶ手前で見送って下さる御主人様は、この日はぎりぎりの所まで一緒に来て下さっていました。
それだけで嬉しくて堪らない。
行ってきなさいという御言葉の代わりに、また太腿を叩かれます。
私は「行ってきます」とお返事をして、駄々を捏ねる事なく、力強く歩き出しました。
時折振り返りながら、見送って下さっている御主人様に大きく手を振る。
私、もっと頑張ります。
もっともっと愛奴として精進して行きます。
御主人様の為に。
御主人様の為だけに。
御主人様の為に生きて行きますから。
そんな決意を掌に込めて、御主人様へ届くように大きく手を振りました。
検査を終え、それぞれに歩き出した御主人様と私。
いつもは寂しさが襲って来ますが、この時ばかりは胸を撫で下ろしていました。
我慢出来た…。
醜い姿を御主人様の前に出さず抑えられたと、私は妙な安堵感を覚えていたのです。
今回の調教は、私自身の葛藤調教。
御主人様は、「葛藤する必要がない事を理解しなければなりませんね」と言って下さいましたが、心は相変わらず言う事を聞いてくれません。
私はまだまだ駄目な愛奴ですが、御主人様の自慢の愛奴でいられるよう、もっともっと清く在りたい。
そう想い、覗いた飛行機の小さな窓には、幾つもの雨の雫。
それはまるで私が飲み込んだ物のように、真っ暗な空へと流れて行きました。
18度目の調教はこれにて終了となります。
周回遅れもなんとか追いつき、19度目の調教は前回分となりました。
既に決定している次回の調教までに、極力書いておきたいと思っていますので、見守って頂けると幸いです。
いつも当ブログに足を運んで下さり、ありがとうございます。
19度目の調教も宜しくお願い致します。
愛奴
開いただけで中身を使わなかったスーツケースのジッパーを閉じながら、使用して頂いた穴は一つだけだったなと想い返していました。
けれどそれは葛藤や落胆ではなく。
御主人様のお気持ちのままに在る事が私の悦びであるのだから、その事実を当然の事として受け入れられるようになりたいという素直な想いでした。
今はまだそうなれず、今日も私の感情は嵐のように忙しく表情を変え続けていましたから。
何度決意をしても、なかなかそこには辿り着けない。
そんな自分を十分過ぎる程に理解している私は、呆れた小さな笑いを心の中で繰り返しながら、クローゼットから取り出したジャケットとコートを御主人様の背中に掛けました。
うなじから見えるお顔色も悪くないし、お疲れになっている様子もない。
御主人様がお元気である事を確認した私は、元通りに閉じたスーツケースを引き、その背中に続いてお部屋を後にしました。
荷物をホテルのフロントに預けて身軽になった私は、ようやく御主人様の腕に掴まります。
いつものように引き摺られるように歩きながら、相変わらず人の多い電車へと乗り込みました。
御主人様と一緒に座れる事は殆どないのですが、この時は久しぶりに並んで座る事が出来たのです。
狭い座席に、体の側面が御主人様に触れている…。
それだけでも嬉しくて堪らないのに、御主人様は電車の揺れに任せて、そのまま私に体重を預けてこられました。
その幸福感に、くすくすと小さく笑う私。
愛おしい…愛おしくて愛おしくて堪らない。
このままずっと電車が走り続けてくれたらいいのに…。
満員電車の中での密かな御主人様とのやりとりは、余りの愛おしさに私を押し潰してしまいそうでした。
けれど毎度の私の願いは叶う筈もなく、人の流れと共にホームへと押し出されて行きます。
歩くのが速い御主人様。
歩くのが極端に遅い私。
直ぐに広がってしまうその距離感を知っている御主人様は、何度も振り返っては、私がついて来ているかを確認して下さいます。
けれど私が御主人様の腕に掴まるより早く御主人様は歩き出されてしまうので、その行動は幾度となく繰り返されていました。
空港に到着した御主人様と私。
いつものように食事をしながら、色んなお話をして下さる御主人様。
博学な御主人様は、私の知らない事を沢山御存知で。
御主人様の事を尊敬する一方で、如何に自分の見て来た世界が小さかったのか、自分の視野の狭さを痛感する。
それはいつもの事なのですが、この時の私はいつも以上にひねくれてしまっていました。
御主人様が私に色んな事を教えて下さる。
嬉しい。
御主人様が見ていらっしゃる世界を私に教えて下さる事が嬉しい。
御主人様はやっぱり凄い。
凄い…。
けれど...。
私はその隣には並べない。
愛奴なのだから隣に並びたいだなんて烏滸がましい。
それは当然の事。
当然の事なのだけれど…。
「ああ、そうか…私は御主人様の隣に並びたかったんだ…」
そう自分の心と向き合ってしまった私には、メニューを相談して下さっている御主人様の言葉が頭に入って来ません。
こんな事を想ってしまう事自体、馬鹿げている。
スーツケースを閉じる時にも、その御心のままに在りたいと望んだばかりなのに。
御主人様の何気ない御言葉一つで、私の心はまた大嵐となっていたのです。
「形式的なものばかりに目を向けていると、足元の大事なものが見えなくなる。
私の心を独占しておいて、その他に何を独占したいと望むのか」
御主人様に見つけて頂いて間もない頃。
まだそのお考えをきちんと理解出来ずにきゃんきゃんと鳴き喚いていた頃に頂いた御言葉。
その時の私にはよく理解出来なかったけれど、こうして行き詰まった時には必ず想い出して、御主人様の御心の下にある自分という物を見つめ直します。
私は何処まで行っても馬鹿で仕方なくて、直ぐにその行き先を見失ってしまいがちですから。
御主人様の御言葉は、全て御主人様からの教え。
その御心の通り、御主人様はいつもいつでも私を大事にして下さっている。
それが違った事等、唯の一度もない。
そう解っているからこそ、そう在れない自分が苦しくて堪らなくて。
ぐっとこみ上げてくる物を一旦落ち着かせようと、トイレに行こうかと想った時。
「ぼうっとしてどうしたのですか」
ろくに返事もしない愛奴に、御主人様がこちらを見ていらっしゃいました。
私はポーカーフェイスが出来る程、大人ではありませんし、それが御主人様の前なら尚の事。
けれど指摘される程の表情をしていたのかと驚いた私は、溢れる寸前だった気持ちをぐっと飲み込みます。
せっかくの御主人様との時間を壊してはいけない。
御主人様に悦んで頂く事が、愛奴である私の努めなのだから。
せめてそれくらいは出来る愛奴であろうと、必死に自分をコントロールしていました。
けれど御主人様はそんな愛奴に気が付かれていたのかもしれません。
食事を終え、後ろをちょこまかとついて来る私に、立ち止まってその腕を差し出して下さったのです。
見えているのは御主人様の背中と、私が掴まりやすいように軽く曲げられた右腕。
真っ直ぐ正面を見据えていらっしゃる御主人様は、まるでバージンロードか何かのよう。
初めて見る光景に驚き、悦び、私はその優しさが嬉しくて、苦しくて。
おもいきり飛びついてはしゃぐ愛奴の太腿を優しく叩きながら、御主人様と私は手荷物検査場へと歩いて行きました。
あっという間に迫る時間。
いつもは検査場のだいぶ手前で見送って下さる御主人様は、この日はぎりぎりの所まで一緒に来て下さっていました。
それだけで嬉しくて堪らない。
行ってきなさいという御言葉の代わりに、また太腿を叩かれます。
私は「行ってきます」とお返事をして、駄々を捏ねる事なく、力強く歩き出しました。
時折振り返りながら、見送って下さっている御主人様に大きく手を振る。
私、もっと頑張ります。
もっともっと愛奴として精進して行きます。
御主人様の為に。
御主人様の為だけに。
御主人様の為に生きて行きますから。
そんな決意を掌に込めて、御主人様へ届くように大きく手を振りました。
検査を終え、それぞれに歩き出した御主人様と私。
いつもは寂しさが襲って来ますが、この時ばかりは胸を撫で下ろしていました。
我慢出来た…。
醜い姿を御主人様の前に出さず抑えられたと、私は妙な安堵感を覚えていたのです。
今回の調教は、私自身の葛藤調教。
御主人様は、「葛藤する必要がない事を理解しなければなりませんね」と言って下さいましたが、心は相変わらず言う事を聞いてくれません。
私はまだまだ駄目な愛奴ですが、御主人様の自慢の愛奴でいられるよう、もっともっと清く在りたい。
そう想い、覗いた飛行機の小さな窓には、幾つもの雨の雫。
それはまるで私が飲み込んだ物のように、真っ暗な空へと流れて行きました。
18度目の調教はこれにて終了となります。
周回遅れもなんとか追いつき、19度目の調教は前回分となりました。
既に決定している次回の調教までに、極力書いておきたいと思っていますので、見守って頂けると幸いです。
いつも当ブログに足を運んで下さり、ありがとうございます。
19度目の調教も宜しくお願い致します。
愛奴