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御主人様と愛奴 変態の日々の記録

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愛奴

Author:愛奴
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24度目の調教⑧ ~愛奴の自覚~

御主人様の温もりの中、耳だけをバスルームへ傾けていた私。

頃合を見てお湯加減を確認しに行った私がベッドへ戻ると、「お湯は入りましたか?」と。

まだ眠そうな御主人様が、そのままの体勢で視線だけをこちらへ向けていらっしゃいました。

その光景に少しだけ笑みを堪えながら。

お湯の準備が出来た事をお伝えすると、 シーツの上に私を残したまま、あっという間にバスルームへと入って行かれたのです。

私も急いで長い黒髪を纏め、その後を追ったのですが...。

既にお湯に入られていた御主人様は、その長い脚をぎゅっと畳まれ、バスタブの左側に小さく収まっていらっしゃいました。

残り半分のスペースは…私の為…。

勿論、決してそう仰る事はありません。

けれど私は知っていました。

御主人様の行動、御言葉。

その視線にさえも。

全てに於いて意味がある事。

その全てが私に何かを示している事。

例え御主人様が意識をされていない事だとしても、私にはその全てに神経を張り巡らせる義務がある。

愛奴として常にそう在る事が、私の日常になっていました。




空けられた空間にゆっくりと身体を沈めた私。

けれども御主人様は微動だにせず、何もお話にはなりません。

私もそれを静かに受け入れ、只お傍に居られる幸せを噛み締めていました。

「静かですね」

ぽつりと。

小さなバスルームに共鳴した、御主人様の低く優しい響き。

まるでそれが合図であるかのように、何時ものように温泉の話をしながら、私はその背中に掛け湯をしていきます。

すると折り畳まれた膝を抱え、ぐるりと私に背中を向けられる御主人様。

お顔は見えなくなりましたが、預けて下さるその背中が愛おしくて。

少しでも気持ち良くなって頂けたなら…。

そう想い、繰り返し繰り返しお湯を掛け続けていました。

「ああ、温泉かと想いましたよ」

ほら、必ずこうして私を読み解いて下さる。

お茶目な所を見せて下さる御主人様も、今ではすっかり珍しくなくなっていました。




お風呂から出た私はまだ温泉の話題が後を引いていて。

御主人様とシーツの上で寛ぎながら、良い旅館がないかと携帯と睨めっこをしていました。

すると隣にいらっしゃった御主人様が、あちら側へと背中を向けてしまわれたのです。

それは先程のバスタブの中と同じ状況でしたが、その背中が違っているのだと直ぐに気が付きます。

こんな事は初めて…。

もしかして拗ねてしまわれたのかな…?

勿論、何時もの私の想い過ごしかもしれません。

けれどその仕草が何だか無性に愛おしくて。

私は向けられた背中に自分自身が重なるよう、身体をぴったりと御主人様に添わせました。

それに対して何の反応も示されない御主人様でしたが、私の行動を拒否する事なく、静かに呼吸を共有して下さいます。

御主人様に悦んで頂きたくて、携帯に見入ってしまっていたのです。

ごめんなさい、御主人様…。

そう心の中で語り掛けながら、私は何時の間にか眠ってしまっていました。




ふと気が付くと、御主人様がじっと私を覗き込んでいらっしゃいます。

「歯軋りをしていましたよ」と、寝惚け眼の愛奴を小さく笑われるのです。

恥ずかしい...!

御主人様の前で恥ずかしい所を晒すなんて、最早当然の事ではあるのですが。

全裸にしろ、オナニーにしろ。

ふと我に返ると恥ずかしくて堪らないのは、何時になっても御主人様に良く想って頂きたいという私の欲深さなのかもしれません。

私はそれを誤魔化すようにバスルームへ行くと、新しいお湯の準備をしてから最後の入浴へと御主人様を御案内しました。

来年は温泉旅行をしようと当たり前のようにお話して下さる。

その嬉しさは特別でしたが、それが当たり前に感じられている自分もいて。

悲しかったり不安になっていた自分は、何時しか何処か遠くに行ってしまったような気がしていたのです。




それぞれに身支度を済ませ、部屋を後にした御主人様と私。

と、その時。

電池を抜いておいた筈のバイブが、スーツケースの中で突然動き出してしまいました。

仕方なくフロアの隅に移動し、スーツケースを開けて中身を確認する私。

人が来ないよう、立ちはだかって下さる御主人様。

全く以て笑い事ではありませんでしたが、その状況が余りにも可笑しくて。

まるで二人で悪戯をしているような、誰も知らない秘め事に愉しくなってしまっていました。




偶然に接触良好になっていたバイブを納めると、無事にスーツケースをフロントへと預けた私は、御主人様の後をついて何時ものように駅へと向かいます。

しかしその腕に掴まり損ねてしまった私は、見失わないように愛しい背中を必死で追い掛け続けました。

腕にぶら下がっていない私がそういう状態にある事は、既に御主人様も理解をして下さっているようで。

何度も立ち止まられては、繰り返し繰り返し私の存在を確認して下さるのです。

けれど決して待っては頂けない。

それがやっぱり御主人様らしくて。

私はぴょこぴょこと、その背中を追い掛けて行くのでした。




程良く混んでいる電車内。

並んで吊り革に掴まると、御主人様が私の鞄を取って、ひょいと網棚に乗せて下さいます。

決して小さくない、私よりも背の高い御主人様。

身長が昔からコンプレックスの一つであった私にとって、それはとてつもなく鼓動の速くなる行為で。

けれど終始無言の御主人様にとっては、決して気に止める事のない行為。

その事がまた、私を悦ばせて止まないのでした。




この日は今年最後の調教日。

去年もぐずぐずと燻っていた私でしたが、この一年で少しだけ変われたような気がして。

何時ものように空港で食事をし、残り短い御主人様との時間を精一杯愉しんでいました。

不思議な事に、以前のように、纏わり付いて離れなかった寂しさは全く感じなくなっていたのです。

只、御主人様と過ごせるこの時間が堪らなく嬉しい。

御主人様のお傍にいられるだけで何て幸せなんだろう。

そんな感情だけが私に満ち溢れて、暗い悲しい感情は、一欠片も浮かんで来ませんでした。




「よいお年を」

早く行けと叩かれる御主人様へ向けて、今年最後の御挨拶をお送りします。

私が検査場を通り過ぎるまで。

何度も大きく手を振りながら、必ず待っていて下さる御主人様。

「悲しむ必要はない」

そう何度も繰り返されてきた御言葉の意味が、この時初めて受け入れられているような気がしたのです。

私はずっと御主人様のお傍にいる。

例えこの身体が近くに無いとしても、常に御主人様と共に在るのだと。

遠くに見える御主人様に大きく両手を振って、2019年の調教は終了しました。









皆様、如何お過ごしでしょうか?

御主人様も私も元気にしていますが、この状況の中、心休まらない日々が続いています。

私は勿論休業状態ですが、なかなか気持ちの整理が付かず…

泣いたり落ち込んだりしながら、やっとブログを書けるまでに落ち着いてきました。



このブログは、御主人様との大切な時間を綴った物ですから。

簡単に書く事等出来ず、毎回、何十回も読み直しながらアップさせて頂いています。

ですから心身共に不安定な状態では、どうしても更新する事が出来なかったのです。



当然の事ながら、次回の調教は未定のまま。

年明けの調教が一回分残っていますから、それを書いている間に、世界が落ち着いてくれればいいなと願っている所です。

皆様もどうか十分にお気を付けて。







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いつも当ブログに足を運んで下さり、ありがとうございます。

25回目の調教もどうぞ宜しくお願い致します。



愛奴

【 2020/05/10 17:17 】

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