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御主人様と愛奴 変態の日々の記録

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愛奴

Author:愛奴
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御主人様の愛奴です。
お初の方は「はじめに」をご参照下さい。

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SMのその先へ

御主人様に見つけて頂いたあの日から四年以上。

その教えを少しずつ理解しながらも、ずっとそこから抜け出せなかった私は、押し寄せる波のように引いてはまた膨らんでくる自分の醜さに、ずっと一人で葛藤を続けて来ました。

「そんな必要等ないのですよ」
その度に、何度も優しく言い聞かせて下さる御主人様。
自分を見つめ、思考し、御主人様の想いに寄り添えるようになりたいと必死に頑張っていた愛奴でしたが…。

その本当の意味を理解する事等出来ていなかったのだと、この時初めて知る事になったのです。




これは、今までずっと拭えなかった葛藤の結末であり、今までで一番大きな成長を遂げた愛奴のお話。

凄く苦しかったし、何より御主人様を沢山困らせてしまいました。
今でも想い出すと、穴に入ってしまいたいくらいに申し訳ないです…。

けれどこの出来事があったからこそ、今、見えない未来にも不安を感じる事等ありません。
これは、この先もずっと変わる事の無い未来。

「御主人様の世界で、御主人様と共に在る事」
最初から解っていた事実に、ようやくその葛藤を脱ぎ棄てる時が訪れたのでした。




それは去年の年末の事。
いつもせかせかと忙しくしている愛奴が、年末年始のお休みに入って少し落ち着いた頃の出来事です。

ゆっくり過ごせるのはもちろん嬉しいのですが、時間があるといつも以上に脳内が活性化してしまい、何時もだったら気にならない事までやたらと気になってしまいます。

普段から交感神経が優位過ぎる私は、「気にしない」という行為が非常に苦手で。
考えても仕方のない事をぐるぐると考えてしまう癖があるのです。

その度に何度も御主人様に助けて頂いて来ましたが、この時も私の悪い癖が炸裂してしまって…。
心の中にふと湧いても、何時もなら流せてしまう程の小さな欠片は、私の中で確かに引っかかり、あっという間に大きくなってしまったのでした。




私と同じく、お休み中の御主人様。
詰まらない事を言って、絶対に困らせたくはない。

そんな御主人様への想いと、自分の稚拙さを天秤にかけ、自分の気持ちを半ば強引に抑え込むのが私の唯一の避難方法。
御主人様より大切な物は存在しないのですから、私にとって、自分を騙まし込むのには最善の方法だったのですが…。

その奥の手を使い過ぎたのかもしれません。
今までそうやって自分に納得させられて来た愛奴の重過ぎる気持ちは、この時、遂に箍を外してしまい、自分ではどうする事も出来ない程に膨れ上がってしまったのです。




それでも一旦は抑え込み、自分の力で何とかしようと試みました。
しかしそういう時に限って悪い事ばかりが想い起こされてしまい、今まで泣いて来た記憶が次々と膨らんで来るのです。

こういう事は今までも何度かありましたが、それなりに忙しかったので、時間が掛かってもその内に自分と折り合いを付ける事が出来ていました。

けれどこの時は条件が最悪。
お互いに時間があるという事実が、私を増々爆発させてしまったのでした。




もう自分ではどうする事も出来ない。
自分の闇に溺れながら、私は年明け、意を決して御主人様にお話をさせて頂きました。

御主人様を想う余り、私は自分の想いを押し殺してしまうようになった事。
お忙しい御主人様の負担になりたくなくて、何気ない会話を持ち出さなくなった事。
けれどそうする事が次第に御主人様のお考えを見えなくしてしまっている事。

「御主人様は今、何を想っていらっしゃいますか?
私がどうある事を望んでいらっしゃいますか?
全て解っている筈なのに、どうして私はこんなに揺れているのか自分でも判りません。
ただ苦しくて、息が出来なくて。

結局私は何時も自分の事しか考えられていないのだと。
そんな自分がどうしようもなく堪えられないのです。」




もしかしたら、本当に御主人様を幻滅させてしまうかもしれない。
本気でそう想いましたが、私はそれ程に追い詰められていました。

何よりも大切な御主人様への私の想いは重く深くなり過ぎて、自分で抱えきれなくなっていたのでしょう。

呆れられる事を覚悟はしていましたが、やはり御主人様は私の御主人様でしかなかった。
年明けのお仕事がお忙しい中、私の身勝手な訴えに丁寧に応えて下さったのです。




それは久しぶりに見た御主人様からの御言葉。
いえ、いつも見てはいるのですが。
御主人様がご自分の気持ちをお話になる事は最近では殆どありませんから、私には一種の驚きのように映っていました。

「お前が私の愛奴でいる事で、穏やかになる反面、辛い想いをする事も理解しています」

それは出逢った当初から仰っていた事でしたが、今の私には身に染みて感じられていましたし、事実、私はこうして答えのない何かに苦しみ続けている。

それでも絶対に逃げないと決めていました。
例え御主人様を困らせる事になっても(なっていますが…)、私はそこに立ち向かわなければならない。
何時か乗り越えなければならない壁が、今その時を迎えているのだと感じたのです。

自分でも何を求めているのか、どうしたいのかすらも解らない。
そんな事が少なくない私に、御主人様はこう続けて下さいました。

伝えたい事は溜め込まず、吐き出して構わないと。
お前の発する言葉に向き合うのは、とても大事な事だからと。




それも、ずっとずっと前の事。
まだ出逢って間もなかった御主人様に対して、私は何かと突っかかってばかりいました。

過去に何度も傷付いた経験もありましたし、御主人様のような方と知り合うのは初めてだったので、自分の中の疑問と怪しさを一つ一つ解消するように、かなり突っ込んだ質問ばかりしていたのです。

勿論、御主人様はそういった類がお好きではありませんから。
上手くはぐらかされたりして、なかなかその御心の中を見せては下さいませんでした。

けれど私はそれがどうしても納得出来なくて。
御主人様に近付きたい一心で、何度も何度も挑戦しては、その度に御主人様をしっかりと困らせてしまっていたのです。

経験のない私には、体当たりでぶつかるしか方法が判らなかった。
私の全てを必死にお伝えしますから、御主人様も私に向き合って下さいとお願いをした事があったのでした。




遠く離れている御主人様と私。
繋がる言葉にしか頼る事の出来なかったその時の精一杯のお願いを、御主人様は今もしっかりと覚えていて下さっていて。

答えの無い愛奴の訴えに、きちんと向き合って下さった事が嬉しくて堪らなかったのです。




それでも私の心は救われませんでした。
御主人様が私の想いをしっかり受け止めて下さった事はとても嬉しかったのですが、覚悟はしていたものの、御主人様を必要以上に困らせてしまった事。
何処まで行っても出口の無い私の闇。

全ては私の弱さだと解っていましたが、どんなに考えても息が苦しくて。
自分でも何をしたいのか全く判らなくなってしまったのです。




欲深い私。
御主人様が欲しい私。
御主人様を困らせたくない私。
従順でいたい私。

沢山の私はそのどれもが本当で、そのどれもが相反している。
これは自分で解決しなければならない問題だ…。
そう想いながら、御主人様から頂いて来た言葉達を、過去へ過去へと遡って行きました。




とある掲示板での偶然の出逢いから始まった御主人様と私。
その遣り取りは常に言葉だけで、実際にお逢いするまでも、お互いの写真一枚を交換しただけ。
それ程に、画面に映し出される御主人様の御言葉は、私の心を確実に掴んで離さない物でした。

ですから私はその度に画面を保存し、何かある度にそれを見返すというのが恒例になっていて、どんな時でも御主人様の御言葉に助けられて来たのです。
ですからこの時も、その答えは私の携帯の中にしっかりと保存されていました。




「形式的なものにばかり目を向けていると、足元の大事なものが見えなくなる」

それもずっと以前に頂いた御言葉。
けれど私はやっぱりまだそこにいて。
変わる事のない御主人様の御心は、靄の中にいる私を一瞬で引き上げて下さったのです。

私…何も見えていなかった。
自分の心の苦しさに囚われ過ぎて、自分の事しか考えていなかった。
私にこんな言葉を投げ掛けられた御主人様は、一体どんなお気持ちになられたのだろう。

「お前が私の愛奴でいる事で、穏やかになる反面、辛い想いをする事も理解しています」

数日前に頂いたその御言葉の中に、御主人様の少し困った笑顔が見えた気がしました。
解っていらっしゃらない筈等無い。
けれど変える事は出来ない。
御主人様も私も今いる場所で、この想いを通わせる事しか出来ない。

それは余りに特別で、夢に描いたような美しい安寧。
けれど決して掴み取る事の出来ない、誰もが求める幸せの形。

辛いのは私ばかりだと想っていた。
私が苦しむ事で、御主人様が何も想われない筈が無い。
御主人様が、私に求められる事は一体何だろう。

膨らみ切った闇から初めて外を見る事が出来た私は、只、御主人様のお考えが知りたかっただけなのかもしれないと想いました。

何も無い私。
御主人様を想う事しか出来ない日々。
始めの頃は多かった遣り取りも、今ではすっかり少なくなって。
お互いの関係性について話す事も殆ど無くなった。

けれどそれが何を意味しているのか。
それがどれだけ幸せで、どれだけ御主人様に守られているのか。

私はそれを誰よりも理解している筈なのに、御主人様を求める気持ちを何時までも昇華出来なかったのだと。
この時、初めて気が付く事が出来たのです。




私は問いました。
御主人様は、私といて楽しいですか?
私という存在が、荷物のように重く感じていらっしゃいませんか?

それは自虐ではなく、本当に素直な質問。
私が馬鹿であるせいで、御主人様を苦しめてしまっているのではないかと。
私を大切にして下さる事で、御主人様が辛い想いをされているのではないかと。

私に出来る事なんて殆どないけれど、せめてその御心に寄り添いたかったのです。

御主人様は仰いました。
「私はお前が、私の為にお利口でいることを誰よりも知っていますし、理解しています。
私はそれで十分なのですよ」と。

その時、どんなに頑張っても追い出せなかった黒いどろどろとした物が、丸い光の玉となって私の中から出て行くのが見えたような気がしました。

御主人様の御言葉は魔法。
決して多くはない文字達の中には、私には計り知れない程の深い想いが込められています。

私はそれを誰よりも知っている筈なのに。
御主人様の御心の傍に居させてもらいながら、その本当の意味をやっぱり理解出来ていなかった。
それに気が付くと同時に、御主人様が見ていらっしゃる世界を初めて知る事が出来たような気がしたのです。




まるで、ドミナントとサブミッシブ。
支配と従属。
御主人様のお口からこの言葉が出た事はありませんが、それ以上に当て嵌まる言葉は見つかりませんでした。

ああ、そうだったんだ…。
風俗で働く私の将来を気に掛けて下さる御主人様。
私が穏やかに過ごせる事を望んで下さる御主人様。
行動、報告、職業、金銭、身体、精神、その未来と魂まで。

私を一生の愛奴とする事を最初に宣言して下さった御主人様の世界は、こんな色をしていたのだと。
四年間の全てが、たった一色で作られたパズルピースのように次々と当て嵌まり。
ずっと探していたその景色に、私はようやく辿り着く事が出来たのです。




深い呼吸。
久しぶりにきちんと息が出来たような気がした私は、深呼吸を繰り返しました。

あんなに苦しかった物が、今は何も感じない…。
御主人様の深い深い愛情に満たされて、私は自由な魚になったような気分でした。

もう、何も要らないや。
御主人様が笑っていて下されば、それでいい。
御主人様が幸せでいて下さるのならば、それだけでいい。
私の望みは、只それだけだ。

御主人様の為ならば何でもしよう。
この手も足も、心臓でさえも私には要らない。
御主人様が笑って下さるのならば、それ以上に大切な事は私には何も無いんだ。




「私の為に死ねる愛奴」
御主人様がずっと前に教えて下さったその理想は、今、現実となって此処に在ります。

私の全ては、御主人様の為に。
やっと掴んだこの世界は、御主人様が私を堕とすと宣言された天国にきっと違いないのです。












この出来事をどうしても残しておきたくて、いつも以上に時間を掛けて書かせて頂きました。

ブログをずっと読んで下さっている方は御存知かと想いますが、此処に辿り着くまでに長い時間と葛藤を何度も繰り返しています。
けれどそれを文字に起こし、こうして振り返る事により、自分を客観的に見つめる事が出来たのではないかと想っている所です。




次に御主人様の足元へ帰れる日は未定のまま。
けれど不思議な事に、以前のような悲しい気持ちは湧き上がって来ません。
勿論、御主人様にお逢いしたいですし、寂しさを感じる事もありますが…。

御主人様と私は、同じ時を生きている。
それだけで私は満たされて、御主人様から頂く御言葉に守られているような気持ちになれるのです。

こんなにも素晴らしい世界があったなんて。
変わりゆくこの世界を見つめながら、また新たな気持ちで一日一日を過ごしている愛奴です。








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愛奴



【 2020/06/27 23:39 】

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