御主人様と愛奴 変態の日々の記録
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Author:愛奴
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またSMに嫌悪感をお持ちの方は閲覧をお控え下さい。
自己責任の元での閲覧をお願い致します。
御主人様の愛奴です。
お初の方は「はじめに」をご参照下さい。
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私からのお返事のみ掲載させて頂きますので、SMに興味のある方もノーマルの方も、皆様お気軽に足跡を残して下さると嬉しいです。
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湯上りのベッド。
携帯を見ながら、以前泊まったお気に入りの旅館を検索していらっしゃる御主人様。
それを静かに見守りながら、また温泉旅行に行けるのかなと淡い期待をする愛奴。
それは御主人様と過ごせる時間が長くなるという悦びでもあるけれど、御主人様に寛いで頂きたいという想いでもありました。
いつもお忙しい御主人様。
お仕事の事を忘れ、ゆっくりと温泉に浸かって寛いで頂きたい。
自然にそう想えている私は、去年の温泉旅行の時とは何かが確実に違っている。
自分自身をそう感じながら、私は優しい空気に包まれていました。
ふと想い出し、荷物の中からお土産を取り出した私は、御主人様と一緒に歯応えの良いお菓子を味わいます。
「美味しいですね」
どうやら気に入って下さった御様子に、私も嬉しくなる。
続いて金銭の入った封筒を取り出すと、それを身体の上に乗せるようにと仰いました。
私は少し戸惑いながらも、仰向けになって携帯の画面から視線を外されないそのお腹に、そっと封筒を乗せてみます。
呼吸に合わせてふわふわと揺れている封筒。
それに構う事なく、画面を見つめたままの御主人様。
私はその光景を微笑ましく見つめながら、チェックアウト前にもう一度入浴をされますか?とお聞きしました。
そうですね、という短いお返事。
私は新しいお湯をバスタブに張る為、一人バスルームへと向かいながら、チェックアウトまでの時間が短い事を認識していました。
湯温を整え、お部屋に戻った私。
傍に寄る愛奴を確認されると、お腹の上に乗っていた封筒を手に取られ、御奉仕をするようにと御命令されます。
私はそれが嬉しくて。
自分でも判る程にいそいそとその脚の間に収まり、柔らかくなっているペニスに舌を這わせました。
傾き始めた陽射しに、今回の御奉仕はもう終了なのだと想っていたからなのです。
自我を持つ事は赦さない。
以前にそう仰った御主人様。
それは自分の願望を口にしないという意味ではなく、それすらも持ち合わせない事。
そう理解した私は、自ら御奉仕を願い出る事も、それを自らの意思として願う事もありません。
けれど御主人様に命じられる事で、その想いは一気に解き放たれる。
御奉仕が出来る悦びに、その想いが溢れて仕方がなくなってしまうのです。
私の御奉仕に、直ぐにその硬さを取り戻してくれる愛しいペニス。
けれど御主人様がベッドに立ち上がられた事で、あっという間に私の口内から出て行ってしまいました。
十分に御奉仕出来なかった事を残念に思っていると、御主人様はそのまま私の背後に回られ、シーツの上に蹲っている私の脚を引き伸ばされます。
意図せず、うつ伏せになった私。
柔らかな陽射しに包まれた明るいお部屋の中で、コンプレックスを曝け出された私は、恥ずかしくて居た堪れなくて。
シーツに顔を伏せていると、つうっと生暖かい物が割れ目に伝いました。
その正体を何度も味わっている私は、充てがわれる熱に期待で胸がはち切れそう。
閉じられた脚の肉を割り、使い慣れた穴へと侵入して来る御主人様。
それは快楽とは別の悦びで。
御主人様を感じられる特別感に、私は狂ってしまう寸前でした。
何時もは奥まで貫かれる凶暴な快楽に息が出来なくなるけれど、この時は優しくゆったりと。
柔らかな快楽に、意識がどこにあるのかさえ判らなくなってしまいます。
と、揺さぶられる身体が突然止まり、私から離れられた御主人様。
どうやら私の奥に精子を与えて下さったようでしたが、その事実さえも朧気でした。
自分がどうなっているのか、この存在が何なのか。
理解出来ている筈なのに、それを認識する事を忘れてしまったようで。
まるで本当に、御主人様の所有される物体になったように。
細胞の一つ一つに御主人様が満たされるような。
今まで感じた事のない、不思議な悦びに囚われていたのです。
動かない愛奴から零れる体液にティッシュを与えられると、そのままバスルームへと向かわれた御主人様。
私はそれを知りながらも動けなかったのですが、それより何より、この充足感を逃したくなくて。
開いたバスルームの扉から見える、バスタブに置かれた御主人様の手をぼんやりと見つめていました。
このまま御主人様に取り込まれてその一部になってしまいたい。
そうなれたらどんなに幸せだろうか...。
そうしてずっと遠くにあった意識でしたが、水音と共にバスタブから出られた御主人様の御姿が目に入った途端、まるでベッドから飛び上がるようにそのお傍へと向かいました。
御主人様にご自分でお身体を拭かせるなんて...!
勿論そんな時もありますが(私が眠っている間にお一人で温泉に入られている場合等)、出来る限りお手伝いをさせて頂く事、御主人様と共に在る事が、沢山ある私の悦びの一つなのです。
御主人様からバスタオルを預かり、しっかりとそのお身体を拭き上げると、私にもお湯に浸かるようにと促され、御主人様はさっとバスルームを出て行かれました。
一人、その場に取り残されてしまった私。
出来るだけ早く御主人様のお傍に戻ろうと想い、静かにお湯に身体を浸します。
御主人様の匂いが消えてしまわないように…。
そう想いながら肌にゆっくりとお湯を滑らせると、手早く身体を拭き上げました。
けれど。
タオルが汚れている。
真っ白なタオルは、小さく朱色に染まって。
出血している…。
まるで処女喪失でもしたかのように、そこには赤い点が付着していました。
私は御主人様に気が付かれないよう、下着に薄いナプキンを付けて対処をします。
その瞬間は何故だか、御主人様に知られたくないような気がしていたのです。
下着を着けた私は、クローゼットから御主人様のお洋服を取り出し、ちょこまかと動きながらお着替えを手伝います。
それから私の首に嵌っている金属の輪を外して下さる御主人様は、その金具を取り外しながら、私と首輪が一体化していて外すのを忘れてしまうと仰いました。
私はそれが嬉しくて嬉しくて。
出来る事ならば、何時如何なる時も御主人様の所有物である証を身に着けていたい。
そう願う私の気持ちを、御主人様は何時でも御存知なのですから。
携帯を見ながら、以前泊まったお気に入りの旅館を検索していらっしゃる御主人様。
それを静かに見守りながら、また温泉旅行に行けるのかなと淡い期待をする愛奴。
それは御主人様と過ごせる時間が長くなるという悦びでもあるけれど、御主人様に寛いで頂きたいという想いでもありました。
いつもお忙しい御主人様。
お仕事の事を忘れ、ゆっくりと温泉に浸かって寛いで頂きたい。
自然にそう想えている私は、去年の温泉旅行の時とは何かが確実に違っている。
自分自身をそう感じながら、私は優しい空気に包まれていました。
ふと想い出し、荷物の中からお土産を取り出した私は、御主人様と一緒に歯応えの良いお菓子を味わいます。
「美味しいですね」
どうやら気に入って下さった御様子に、私も嬉しくなる。
続いて金銭の入った封筒を取り出すと、それを身体の上に乗せるようにと仰いました。
私は少し戸惑いながらも、仰向けになって携帯の画面から視線を外されないそのお腹に、そっと封筒を乗せてみます。
呼吸に合わせてふわふわと揺れている封筒。
それに構う事なく、画面を見つめたままの御主人様。
私はその光景を微笑ましく見つめながら、チェックアウト前にもう一度入浴をされますか?とお聞きしました。
そうですね、という短いお返事。
私は新しいお湯をバスタブに張る為、一人バスルームへと向かいながら、チェックアウトまでの時間が短い事を認識していました。
湯温を整え、お部屋に戻った私。
傍に寄る愛奴を確認されると、お腹の上に乗っていた封筒を手に取られ、御奉仕をするようにと御命令されます。
私はそれが嬉しくて。
自分でも判る程にいそいそとその脚の間に収まり、柔らかくなっているペニスに舌を這わせました。
傾き始めた陽射しに、今回の御奉仕はもう終了なのだと想っていたからなのです。
自我を持つ事は赦さない。
以前にそう仰った御主人様。
それは自分の願望を口にしないという意味ではなく、それすらも持ち合わせない事。
そう理解した私は、自ら御奉仕を願い出る事も、それを自らの意思として願う事もありません。
けれど御主人様に命じられる事で、その想いは一気に解き放たれる。
御奉仕が出来る悦びに、その想いが溢れて仕方がなくなってしまうのです。
私の御奉仕に、直ぐにその硬さを取り戻してくれる愛しいペニス。
けれど御主人様がベッドに立ち上がられた事で、あっという間に私の口内から出て行ってしまいました。
十分に御奉仕出来なかった事を残念に思っていると、御主人様はそのまま私の背後に回られ、シーツの上に蹲っている私の脚を引き伸ばされます。
意図せず、うつ伏せになった私。
柔らかな陽射しに包まれた明るいお部屋の中で、コンプレックスを曝け出された私は、恥ずかしくて居た堪れなくて。
シーツに顔を伏せていると、つうっと生暖かい物が割れ目に伝いました。
その正体を何度も味わっている私は、充てがわれる熱に期待で胸がはち切れそう。
閉じられた脚の肉を割り、使い慣れた穴へと侵入して来る御主人様。
それは快楽とは別の悦びで。
御主人様を感じられる特別感に、私は狂ってしまう寸前でした。
何時もは奥まで貫かれる凶暴な快楽に息が出来なくなるけれど、この時は優しくゆったりと。
柔らかな快楽に、意識がどこにあるのかさえ判らなくなってしまいます。
と、揺さぶられる身体が突然止まり、私から離れられた御主人様。
どうやら私の奥に精子を与えて下さったようでしたが、その事実さえも朧気でした。
自分がどうなっているのか、この存在が何なのか。
理解出来ている筈なのに、それを認識する事を忘れてしまったようで。
まるで本当に、御主人様の所有される物体になったように。
細胞の一つ一つに御主人様が満たされるような。
今まで感じた事のない、不思議な悦びに囚われていたのです。
動かない愛奴から零れる体液にティッシュを与えられると、そのままバスルームへと向かわれた御主人様。
私はそれを知りながらも動けなかったのですが、それより何より、この充足感を逃したくなくて。
開いたバスルームの扉から見える、バスタブに置かれた御主人様の手をぼんやりと見つめていました。
このまま御主人様に取り込まれてその一部になってしまいたい。
そうなれたらどんなに幸せだろうか...。
そうしてずっと遠くにあった意識でしたが、水音と共にバスタブから出られた御主人様の御姿が目に入った途端、まるでベッドから飛び上がるようにそのお傍へと向かいました。
御主人様にご自分でお身体を拭かせるなんて...!
勿論そんな時もありますが(私が眠っている間にお一人で温泉に入られている場合等)、出来る限りお手伝いをさせて頂く事、御主人様と共に在る事が、沢山ある私の悦びの一つなのです。
御主人様からバスタオルを預かり、しっかりとそのお身体を拭き上げると、私にもお湯に浸かるようにと促され、御主人様はさっとバスルームを出て行かれました。
一人、その場に取り残されてしまった私。
出来るだけ早く御主人様のお傍に戻ろうと想い、静かにお湯に身体を浸します。
御主人様の匂いが消えてしまわないように…。
そう想いながら肌にゆっくりとお湯を滑らせると、手早く身体を拭き上げました。
けれど。
タオルが汚れている。
真っ白なタオルは、小さく朱色に染まって。
出血している…。
まるで処女喪失でもしたかのように、そこには赤い点が付着していました。
私は御主人様に気が付かれないよう、下着に薄いナプキンを付けて対処をします。
その瞬間は何故だか、御主人様に知られたくないような気がしていたのです。
下着を着けた私は、クローゼットから御主人様のお洋服を取り出し、ちょこまかと動きながらお着替えを手伝います。
それから私の首に嵌っている金属の輪を外して下さる御主人様は、その金具を取り外しながら、私と首輪が一体化していて外すのを忘れてしまうと仰いました。
私はそれが嬉しくて嬉しくて。
出来る事ならば、何時如何なる時も御主人様の所有物である証を身に着けていたい。
そう願う私の気持ちを、御主人様は何時でも御存知なのですから。
お掃除を中断するように、うつ伏せになられた御主人様。
マッサージの御命令を受け、掌にオイルを伸ばした私は、再びそのお尻に座らせて頂きながら、背中から足裏まで念入りに指圧させて頂きました。
「ありがとう」
マッサージを終えた私に、まるで当たり前のように届く感謝の言葉。
お礼を直接聞く機会が余りない私は、一人驚いてしまいます。
けれど御主人様は特に気に留められる様子も無く。
30分後に起こすようにと仰って、静かに目を閉じられました。
飛行機で眠れなかった私は、携帯のアラームをセットすると、その腕に寄り添って目を閉じます。
叱られてしまうかもしれないと想いましたが、少しでも御主人様に触れていたくて。
目の前にある二の腕を、そっと掌で包みました。
「温かいからそうしていなさい」
私を見遣るでもなく、目を開かれるでもなく。
けれど想い掛けなかった御主人様からのお赦しは、とてもとても優しい耳触りで私へと届いたのです。
心がふんわりと暖かい。
私は御主人様の寝息を聴きながら、あっという間に眠りへと落ちて行きました。
静かなお部屋に響く、小さなアラーム音。
寝惚け眼の御主人様は、私を包み込むように身体の上に腕を回して下さると、また深い寝息を吐いて眠りに付かれます。
その腕の重さが、堪らなく心地好くて。
御主人様の呼吸を子守唄にしながら、私も再び意識を手放しました。
先に起きたのは私の方。
その物音に気が付いて目を覚まされた御主人様は、少し首が痛くなったと仰って、ぐるりと寝返りを打たれます。
その背中を確認してから、今の内にお風呂の準備をしておこうと想った私。
目覚めに入浴される事の多い御主人様の為、なるべく静かにベッドから降りようとしたのですが...。
僅かな振動に、優しい声色が追いかけて来ました。
「もしかしてお風呂のお湯を入れてくれるのですか?」
それは先程と同じ、低く優しいトーン。
まだ微睡んでいらっしゃる様子の御主人様は、私の返事を確認して下さったのかどうか…。
そのまま眠りへと落ちて行かれたようでした。
ああ、この空気がとても愛おしい。
御主人様のいらっしゃる空間は、何時も穏やかな時間が流れていて。
私はそれを大切に大切に噛み締めながら、そっとバスルームへと向かいました。
お湯の温度を調整してからお部屋へ戻ると、御主人様はすやすやと気持ち良さそうに眠っていらっしゃいます。
私は再びベッドを揺らさないよう静かにそのお傍へと行き、健やかな寝顔を覗き込みました。
なんて愛おしいんだろう...。
押さえ切れない感情に恐る恐る手を伸ばし、短く生え揃っているお鬚に触れてみました。
指先に刺さる心地の好い違和感。
何だかそれが嬉しくて。
愛奴の悪戯を知る由もない御主人様は、穏やかな寝息を一定のリズムで繰り返されています。
私はそれをクラシックのように聴きながら、ただ静かにその時を過ごしていました。
最近は良く眠られているのか、寝起きの良い御主人様。
再度、お湯加減を見に行ったバスルームから戻ると、その物音に目を覚まされていました。
お風呂の準備が出来ている事をお伝えすると、少しだけぼんやりとした様子で、バスルームへと向かわれます。
私もその後を飛び跳ねるように追い掛け、半分空けて下さっているバスタブに腰を下ろしました。
「静かですね」
ふぅっと深く吐き出された息。
高層階のお部屋に物音は聞こえず、御主人様と私の動きに合わせて、小さな水音だけが響いています。
「落ち着きますね」
真っ直ぐ正面を見たままの御主人様の御言葉は、浴室の壁にぶつかって。
更に心地好く、バスルームに響き渡りました。
それは独り言のようで、独り言でない。
私がいる空間にも、御主人様が寛ぎを感じて下さっている事。
それが意味する特別が嬉しくて。
お湯から出てしまっている広い背中に、掌で掬ったお湯を繰り返し掛けていました。
私のその行動に想い出されたのか、温泉に行きたいと仰る御主人様。
料理は海の幸がいいと夢を膨らませていらっしゃるそのお身体をバスタオルで包み、くすくすと笑いながらお部屋へと戻って行きました。
マッサージの御命令を受け、掌にオイルを伸ばした私は、再びそのお尻に座らせて頂きながら、背中から足裏まで念入りに指圧させて頂きました。
「ありがとう」
マッサージを終えた私に、まるで当たり前のように届く感謝の言葉。
お礼を直接聞く機会が余りない私は、一人驚いてしまいます。
けれど御主人様は特に気に留められる様子も無く。
30分後に起こすようにと仰って、静かに目を閉じられました。
飛行機で眠れなかった私は、携帯のアラームをセットすると、その腕に寄り添って目を閉じます。
叱られてしまうかもしれないと想いましたが、少しでも御主人様に触れていたくて。
目の前にある二の腕を、そっと掌で包みました。
「温かいからそうしていなさい」
私を見遣るでもなく、目を開かれるでもなく。
けれど想い掛けなかった御主人様からのお赦しは、とてもとても優しい耳触りで私へと届いたのです。
心がふんわりと暖かい。
私は御主人様の寝息を聴きながら、あっという間に眠りへと落ちて行きました。
静かなお部屋に響く、小さなアラーム音。
寝惚け眼の御主人様は、私を包み込むように身体の上に腕を回して下さると、また深い寝息を吐いて眠りに付かれます。
その腕の重さが、堪らなく心地好くて。
御主人様の呼吸を子守唄にしながら、私も再び意識を手放しました。
先に起きたのは私の方。
その物音に気が付いて目を覚まされた御主人様は、少し首が痛くなったと仰って、ぐるりと寝返りを打たれます。
その背中を確認してから、今の内にお風呂の準備をしておこうと想った私。
目覚めに入浴される事の多い御主人様の為、なるべく静かにベッドから降りようとしたのですが...。
僅かな振動に、優しい声色が追いかけて来ました。
「もしかしてお風呂のお湯を入れてくれるのですか?」
それは先程と同じ、低く優しいトーン。
まだ微睡んでいらっしゃる様子の御主人様は、私の返事を確認して下さったのかどうか…。
そのまま眠りへと落ちて行かれたようでした。
ああ、この空気がとても愛おしい。
御主人様のいらっしゃる空間は、何時も穏やかな時間が流れていて。
私はそれを大切に大切に噛み締めながら、そっとバスルームへと向かいました。
お湯の温度を調整してからお部屋へ戻ると、御主人様はすやすやと気持ち良さそうに眠っていらっしゃいます。
私は再びベッドを揺らさないよう静かにそのお傍へと行き、健やかな寝顔を覗き込みました。
なんて愛おしいんだろう...。
押さえ切れない感情に恐る恐る手を伸ばし、短く生え揃っているお鬚に触れてみました。
指先に刺さる心地の好い違和感。
何だかそれが嬉しくて。
愛奴の悪戯を知る由もない御主人様は、穏やかな寝息を一定のリズムで繰り返されています。
私はそれをクラシックのように聴きながら、ただ静かにその時を過ごしていました。
最近は良く眠られているのか、寝起きの良い御主人様。
再度、お湯加減を見に行ったバスルームから戻ると、その物音に目を覚まされていました。
お風呂の準備が出来ている事をお伝えすると、少しだけぼんやりとした様子で、バスルームへと向かわれます。
私もその後を飛び跳ねるように追い掛け、半分空けて下さっているバスタブに腰を下ろしました。
「静かですね」
ふぅっと深く吐き出された息。
高層階のお部屋に物音は聞こえず、御主人様と私の動きに合わせて、小さな水音だけが響いています。
「落ち着きますね」
真っ直ぐ正面を見たままの御主人様の御言葉は、浴室の壁にぶつかって。
更に心地好く、バスルームに響き渡りました。
それは独り言のようで、独り言でない。
私がいる空間にも、御主人様が寛ぎを感じて下さっている事。
それが意味する特別が嬉しくて。
お湯から出てしまっている広い背中に、掌で掬ったお湯を繰り返し掛けていました。
私のその行動に想い出されたのか、温泉に行きたいと仰る御主人様。
料理は海の幸がいいと夢を膨らませていらっしゃるそのお身体をバスタオルで包み、くすくすと笑いながらお部屋へと戻って行きました。
この時はまだ、下着を脱がれていなかった御主人様。
汚れるといけないので、オイルを使わずに指圧させて頂きますとお伝えします。
するとやはりオイルがあった方が良いとの事で、うつ伏せのまま下着を脱ごうとされていました。
私もウエストのゴムに指を掛けて、その背中を見ながらお手伝いさせて頂きます。
脱ぎ易いように腰を浮かせて下さる御主人様。
そのお身体に隠されて、ペニスがどのような状態なのかは確認出来ません。
今からマッサージをさせて頂くのだから、きっと硬くはなられていない筈...。
そう想いながら脱げた下着を畳んでいると、ふいに仰向けになられた御主人様のペニスは、私の予想とは真逆の状態になっていました。
それは御主人様が求めて下さっている証拠。
嬉しい…!
目に見える変化に飛び付きたい気持ちを抑えながら、御命令に従い、ゆっくりと舌を這わせて行きました。
御主人様の肌の味。
清潔な良い匂い。
お逢い出来ない間も繰り返し想い出す御奉仕の感覚は、私の脳をあっという間に支配して行きます。
「私の役に立てて嬉しいでしょう?」
そうお声を掛けて下さるのは、御主人様が確認をされる為でもあるけれど、私にその事実を知らしめる為。
自分がこうしている事に幸せを感じている事。
御主人様が悦んで下さる事に悦びを感じる事。
私は御主人様の愛奴であるのだと。
その一言には沢山の意図が込められているのだと感じながら、舌を休める事無くお返事をしました。
丁寧に、丁寧に。
言葉に出来ない想いをお伝えするように。
御主人様のお好きな所を舌先で刺激すると、愛しいペニスはより強く脈打ちます。
根元まで柔らかく舌全体で包んで。
御主人様が初めて褒めてくださった、あの夏の御奉仕のように。
舌と唇を使えるだけ使って、御主人様へと狂おしい想いをお伝えするのです。
私の全ては御主人様の物であるのだと。
私は御主人様の所有物であるのだと。
そう想えば思う程、私の口内は卑猥に蠢き続けていました。
「飲ませてあげますから咥えなさい」
それは嬉しい御命令。
私の想いを受け取って下さったのか、御主人様の限界が近付いたようでした。
飲ませて頂くのは勿論なのですが、そう御命令されるのは御主人様が悦んで下さっている証拠。
御主人様が精を放たれる予告。
それが解るから、私は嬉しくて仕方がなくなってしまうのです。
御命令通りにすっぽりとペニスを口内に収めると、速く動かすようにと更に指示が加わりました。
速く、もっと速く。
程無くして放たれた御主人様は、零れてしまいそうなくらいに私の口内を満たしています。
口一杯のそれを飲み込んでしまいたくはなかったのですが、余りの量に上手く呼吸が出来ません。
出来るだけ喉に留められるようゆっくり飲み干すと、口内から鼻に抜ける甘い香りだけが残りました。
そのまま口を離す事無く、お掃除へと移行します。
けれどいつまで経っても私がペニスを離さないので、御主人様は身体を捻り、私から出て行かれてしまいました。
汚れるといけないので、オイルを使わずに指圧させて頂きますとお伝えします。
するとやはりオイルがあった方が良いとの事で、うつ伏せのまま下着を脱ごうとされていました。
私もウエストのゴムに指を掛けて、その背中を見ながらお手伝いさせて頂きます。
脱ぎ易いように腰を浮かせて下さる御主人様。
そのお身体に隠されて、ペニスがどのような状態なのかは確認出来ません。
今からマッサージをさせて頂くのだから、きっと硬くはなられていない筈...。
そう想いながら脱げた下着を畳んでいると、ふいに仰向けになられた御主人様のペニスは、私の予想とは真逆の状態になっていました。
それは御主人様が求めて下さっている証拠。
嬉しい…!
目に見える変化に飛び付きたい気持ちを抑えながら、御命令に従い、ゆっくりと舌を這わせて行きました。
御主人様の肌の味。
清潔な良い匂い。
お逢い出来ない間も繰り返し想い出す御奉仕の感覚は、私の脳をあっという間に支配して行きます。
「私の役に立てて嬉しいでしょう?」
そうお声を掛けて下さるのは、御主人様が確認をされる為でもあるけれど、私にその事実を知らしめる為。
自分がこうしている事に幸せを感じている事。
御主人様が悦んで下さる事に悦びを感じる事。
私は御主人様の愛奴であるのだと。
その一言には沢山の意図が込められているのだと感じながら、舌を休める事無くお返事をしました。
丁寧に、丁寧に。
言葉に出来ない想いをお伝えするように。
御主人様のお好きな所を舌先で刺激すると、愛しいペニスはより強く脈打ちます。
根元まで柔らかく舌全体で包んで。
御主人様が初めて褒めてくださった、あの夏の御奉仕のように。
舌と唇を使えるだけ使って、御主人様へと狂おしい想いをお伝えするのです。
私の全ては御主人様の物であるのだと。
私は御主人様の所有物であるのだと。
そう想えば思う程、私の口内は卑猥に蠢き続けていました。
「飲ませてあげますから咥えなさい」
それは嬉しい御命令。
私の想いを受け取って下さったのか、御主人様の限界が近付いたようでした。
飲ませて頂くのは勿論なのですが、そう御命令されるのは御主人様が悦んで下さっている証拠。
御主人様が精を放たれる予告。
それが解るから、私は嬉しくて仕方がなくなってしまうのです。
御命令通りにすっぽりとペニスを口内に収めると、速く動かすようにと更に指示が加わりました。
速く、もっと速く。
程無くして放たれた御主人様は、零れてしまいそうなくらいに私の口内を満たしています。
口一杯のそれを飲み込んでしまいたくはなかったのですが、余りの量に上手く呼吸が出来ません。
出来るだけ喉に留められるようゆっくり飲み干すと、口内から鼻に抜ける甘い香りだけが残りました。
そのまま口を離す事無く、お掃除へと移行します。
けれどいつまで経っても私がペニスを離さないので、御主人様は身体を捻り、私から出て行かれてしまいました。
お部屋に入り、早速煙草に火を付けられた御主人様。
パンプスを脱いで荷解きをすると、急いでその足元へと向かいました。
目の前にあるその革靴が、やたらと気持ちを急かしています。
私は御主人様が寛がれるよう、革靴を脱ぐお手伝いの許可を願い出ました。
すると、そうする事が当然であるように、私の想いを静かに受け入れて下さった御主人様。
そのまま靴下まで脱いで頂くと、続けてお洋服を脱ぐお手伝いをするよう命じられました。
いつもとは違う、爽やかな色合いのシャツ。
そのボタンを外しながら、直ぐ傍にある御主人様のお顔に緊張します。
何度繰り返しても、これだけは変わらない。
常に御主人様の下にいる私にとって、それは特別な意味を持っていました。
下へ下へとボタンを外して行くと、皮のベルトに辿り着いた私の指。
どうしようかと戸惑っていると、それを感じ取られた御主人様は、先にベルトを外すようにと仰います。
これはこれで、やはり毎回緊張してしまう。
指が縺れそうになるのを悟られないよう、お話をしながらベルトを外して行く私。
何とか脱いで頂いたシャツとスラックスを掴むと、そそくさとクローゼットへ仕舞いました。
皺にならないよう丁寧に服を掛けながら、一息吐いている私に首輪を持ってくるようにと仰る御主人様。
私はクローゼットの前からそのままスーツケースへと向かい、ベルベットの袋を持ってその足元へと戻りました。
それはいつも目にしている物ではあるけれど、御主人様の手にある時だけはその輝きが違う。
鈍く光る銀色は、私の全てを閉じ込めてしまう。
お前はこの世界でしか生きる事が出来ないのだと。
そう示されている気がして。
この瞬間、私はいつも幸せな絶望を目の当たりにするのです。
「冷たいですね」今日もそうお声を掛けて下さりながら、私の首に印を付けて下さる。
シャツのボタンを外す時のように、直ぐ傍にある御主人様のお顔に、私は息を潜めてその証を受け取りました。
何時もの愛奴の姿になった私に、服を脱ぐようにと御命令される御主人様。
慌てて背中のファスナーを下ろしていると、いつも裸でいるようにと低い声が追い掛けて来ます。
それが私の在るべき姿。
お前はそれでいいんだと。
御主人様の所有物である事を示された気がして。
御主人様の前で裸でいる事に、未だに恥ずかしさは拭えずにいますが、その御言葉が嬉しくて嬉しくて。
脱いだワンピースを急いでクローゼットへと仕舞い、飛び跳ねるように御主人様の元へと戻りました。
そこには、シーツにその身を委ねられ、とても気持ち良さそうに寛がれている御主人様の御姿。
私が傍へと近付くと、ごろんとうつ伏せになり、まずは腰のマッサージをするようにと仰います。
首輪しか身に付けていない私がその脚の間に座ると、触れ合う肌が冷たくて気持ちが良いと仰り、きゅっと太腿をくっ付けて下さいました。
御主人様の太腿に挟まれた愛奴。
素肌が触れ合う事の心地好さ。
それが愛しい方なら尚更。
嬉しくて嬉しくてどうしようもない。
マッサージを受けるのはいつも御主人様ですが、それをさせて頂いている私も、勿論満たされて癒されているのです。
パンプスを脱いで荷解きをすると、急いでその足元へと向かいました。
目の前にあるその革靴が、やたらと気持ちを急かしています。
私は御主人様が寛がれるよう、革靴を脱ぐお手伝いの許可を願い出ました。
すると、そうする事が当然であるように、私の想いを静かに受け入れて下さった御主人様。
そのまま靴下まで脱いで頂くと、続けてお洋服を脱ぐお手伝いをするよう命じられました。
いつもとは違う、爽やかな色合いのシャツ。
そのボタンを外しながら、直ぐ傍にある御主人様のお顔に緊張します。
何度繰り返しても、これだけは変わらない。
常に御主人様の下にいる私にとって、それは特別な意味を持っていました。
下へ下へとボタンを外して行くと、皮のベルトに辿り着いた私の指。
どうしようかと戸惑っていると、それを感じ取られた御主人様は、先にベルトを外すようにと仰います。
これはこれで、やはり毎回緊張してしまう。
指が縺れそうになるのを悟られないよう、お話をしながらベルトを外して行く私。
何とか脱いで頂いたシャツとスラックスを掴むと、そそくさとクローゼットへ仕舞いました。
皺にならないよう丁寧に服を掛けながら、一息吐いている私に首輪を持ってくるようにと仰る御主人様。
私はクローゼットの前からそのままスーツケースへと向かい、ベルベットの袋を持ってその足元へと戻りました。
それはいつも目にしている物ではあるけれど、御主人様の手にある時だけはその輝きが違う。
鈍く光る銀色は、私の全てを閉じ込めてしまう。
お前はこの世界でしか生きる事が出来ないのだと。
そう示されている気がして。
この瞬間、私はいつも幸せな絶望を目の当たりにするのです。
「冷たいですね」今日もそうお声を掛けて下さりながら、私の首に印を付けて下さる。
シャツのボタンを外す時のように、直ぐ傍にある御主人様のお顔に、私は息を潜めてその証を受け取りました。
何時もの愛奴の姿になった私に、服を脱ぐようにと御命令される御主人様。
慌てて背中のファスナーを下ろしていると、いつも裸でいるようにと低い声が追い掛けて来ます。
それが私の在るべき姿。
お前はそれでいいんだと。
御主人様の所有物である事を示された気がして。
御主人様の前で裸でいる事に、未だに恥ずかしさは拭えずにいますが、その御言葉が嬉しくて嬉しくて。
脱いだワンピースを急いでクローゼットへと仕舞い、飛び跳ねるように御主人様の元へと戻りました。
そこには、シーツにその身を委ねられ、とても気持ち良さそうに寛がれている御主人様の御姿。
私が傍へと近付くと、ごろんとうつ伏せになり、まずは腰のマッサージをするようにと仰います。
首輪しか身に付けていない私がその脚の間に座ると、触れ合う肌が冷たくて気持ちが良いと仰り、きゅっと太腿をくっ付けて下さいました。
御主人様の太腿に挟まれた愛奴。
素肌が触れ合う事の心地好さ。
それが愛しい方なら尚更。
嬉しくて嬉しくてどうしようもない。
マッサージを受けるのはいつも御主人様ですが、それをさせて頂いている私も、勿論満たされて癒されているのです。
御主人様の元へ帰る飛行機に乗る為、朝早く家を出た私。
前日にお酒を飲まれていた御主人様から、「完全に二日酔いです」とメールが届きました。
その様子から、多少の気分不良がある事を感じ取った私は、今日もゆっくり休みましょうとお返事をします。
「ええ、のんびりと過ごさせて貰いますよ」
先ずは気を付けて足元まで帰って来なさいと、御主人様からの優しいお返事。
その文面からは、二日酔いながらもお元気な雰囲気が伝わって来ました。
今日は二ヵ月振りに御主人様にお逢い出来る日。
早起きで眠い筈なのに、気持ちが焦っているのか、飛行機の中では一睡も出来ませんでした。
私は自分で自分を落ち着かせながら、真夏の暑さが過ぎ去った空港へと降り立ったのです。
飛行機が無事に到着した事を告げた時、既に御主人様は待ち合わせ場所にいらっしゃった様子。
いつもの店でのんびりお酒を飲んでいるので、慌てずに来なさいと私を気遣う御言葉を掛けて下さいますが、それすらも私には留まりません。
御主人様がもう待って下さっている。
その事で頭がいっぱいになってしまった私は、よく確認もせず、ホームに停まっていた電車に飛び乗りました。
けれど偶然にもそれは、私を一番速く御主人様の所へと運んでくれる列車。
あっという間に駅に着いた私は、御主人様の御姿を想い出しながら、そのお顔を見にお店へと急ぎました。
何時もは程良く空いていますが、今日はやけに混んでいる店内。
前回と同じ席に座っていらっしゃる御主人様の御姿を見つけ、嬉しくて飛び跳ねてしまいそうな気持ちを抑え込みます。
爽やかな半袖のシャツが、細身のお身体によく似合っていて。
その御姿が、何だか何時もより艶やかに感じられました。
御挨拶をしてから、その正面のソファーに座る私。
大きな木のテーブルの上には、泡の残ったグラスと空のお皿が乗っていました。
どうやら私を待って下さっている間に、何か軽く召し上がられたようです。
本当は大分前から待っていて下さったのだろうか...
そんな考えが過ぎりましたが、私は何も確認しませんでした。
それから何時ものメニューと追加のお酒を注文し、何時ものように何気ない会話を愉しみます。
最近はまた腰が痛いと仰る御主人様。
先ず最初にマッサージをするよう指示をされると、運ばれて来たお酒をあっという間に飲み干されてしまいました。
食事を終え、ホテルのフロントへ向かう御主人様と私。
夏が終わりに近付いている今日は、ビルの間に生暖かい風が吹き荒れています。
私の長い髪が舞い上げられるのを見て笑う御主人様は、やはりそこまで気分不良ではない様子。
せっかく綺麗にした御主人様の為のロングヘアでしたが、そんな事はどうでも良く感じられていました。
手櫛で髪を整え、フロントで受付を済ませる私。
突然弾かれたノースリーブの二の腕に驚いていると、御主人様が湾曲してしまったカードを垂直に立て、私に見せて下さっていたのです。
それはまるでトランプタワーの一部のよう。
悪戯な表情に、ほんの少しだけ得意気な御主人様。
それがどうしようもなく愛おしくて。
胸が締め付けられるような想いを隠しながら、送っておいたスーツケースを引いてお部屋へと向かいました。
前日にお酒を飲まれていた御主人様から、「完全に二日酔いです」とメールが届きました。
その様子から、多少の気分不良がある事を感じ取った私は、今日もゆっくり休みましょうとお返事をします。
「ええ、のんびりと過ごさせて貰いますよ」
先ずは気を付けて足元まで帰って来なさいと、御主人様からの優しいお返事。
その文面からは、二日酔いながらもお元気な雰囲気が伝わって来ました。
今日は二ヵ月振りに御主人様にお逢い出来る日。
早起きで眠い筈なのに、気持ちが焦っているのか、飛行機の中では一睡も出来ませんでした。
私は自分で自分を落ち着かせながら、真夏の暑さが過ぎ去った空港へと降り立ったのです。
飛行機が無事に到着した事を告げた時、既に御主人様は待ち合わせ場所にいらっしゃった様子。
いつもの店でのんびりお酒を飲んでいるので、慌てずに来なさいと私を気遣う御言葉を掛けて下さいますが、それすらも私には留まりません。
御主人様がもう待って下さっている。
その事で頭がいっぱいになってしまった私は、よく確認もせず、ホームに停まっていた電車に飛び乗りました。
けれど偶然にもそれは、私を一番速く御主人様の所へと運んでくれる列車。
あっという間に駅に着いた私は、御主人様の御姿を想い出しながら、そのお顔を見にお店へと急ぎました。
何時もは程良く空いていますが、今日はやけに混んでいる店内。
前回と同じ席に座っていらっしゃる御主人様の御姿を見つけ、嬉しくて飛び跳ねてしまいそうな気持ちを抑え込みます。
爽やかな半袖のシャツが、細身のお身体によく似合っていて。
その御姿が、何だか何時もより艶やかに感じられました。
御挨拶をしてから、その正面のソファーに座る私。
大きな木のテーブルの上には、泡の残ったグラスと空のお皿が乗っていました。
どうやら私を待って下さっている間に、何か軽く召し上がられたようです。
本当は大分前から待っていて下さったのだろうか...
そんな考えが過ぎりましたが、私は何も確認しませんでした。
それから何時ものメニューと追加のお酒を注文し、何時ものように何気ない会話を愉しみます。
最近はまた腰が痛いと仰る御主人様。
先ず最初にマッサージをするよう指示をされると、運ばれて来たお酒をあっという間に飲み干されてしまいました。
食事を終え、ホテルのフロントへ向かう御主人様と私。
夏が終わりに近付いている今日は、ビルの間に生暖かい風が吹き荒れています。
私の長い髪が舞い上げられるのを見て笑う御主人様は、やはりそこまで気分不良ではない様子。
せっかく綺麗にした御主人様の為のロングヘアでしたが、そんな事はどうでも良く感じられていました。
手櫛で髪を整え、フロントで受付を済ませる私。
突然弾かれたノースリーブの二の腕に驚いていると、御主人様が湾曲してしまったカードを垂直に立て、私に見せて下さっていたのです。
それはまるでトランプタワーの一部のよう。
悪戯な表情に、ほんの少しだけ得意気な御主人様。
それがどうしようもなく愛おしくて。
胸が締め付けられるような想いを隠しながら、送っておいたスーツケースを引いてお部屋へと向かいました。