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御主人様と愛奴 変態の日々の記録

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Author:愛奴
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23度目の調教⑥ ~御主人様とキャンセル~

電車のホームに並ぶ御主人様と私。

時折、咳をされている様子を気にしながら、今日も混んでいる電車に乗り込みます。

しばらく吊革に掴まっていたのですが、目の前の方が降りられたので、二人で並んで座席に座る事が出来ました。

電車の揺れに合わせて、少しだけ触れ合う肩が優しく嬉しい。

こんな光景が日常だったら良いのに…。

流れて行く景色に淡い願いを込めながら、あっという間に電車は空港へと到着しました。




いつも大勢の人々が行き交う空港は、その腕に掴まっていなければ簡単にはぐれてしまいそうで。

混雑に紛れて御主人様にくっついていた私でしたが、人気のないエスカレーターで、一段だけその距離を取りました。

べたべたするのが好きではない。

ずっと前にそう仰っていた御主人様。

その御言葉がずっと心に残っている私は、余りくっつき過ぎてはいけないのだと認識していて。

けれどその加減も良く判らずに、御主人様の様子を伺いながら行動していました。

きっと御主人様は、そんな愛奴をきちんと感じ取って下さっているのでしょう。

二段下にいる私に手を伸ばし、お腹をくすぐって来られたのです。

まるで、何故そんなに距離を取るのかと言わんばかりに。

私はそれが苦しい程に嬉しくて。

一段距離を縮めて寄り添った背中は、とても暖かく優しい物でした。




この日は食べたい物を決めていらっしゃったのか、迷う事なく一直線にお店へと向かわれた御主人様。

幾度となく訪れている空港には、幾つかのお気に入りが出来ていらっしゃるようで。

前回訪れた時と同じ席に座り、飲み物を注文し終えた時。

突然、温泉の計画を立てようと提案されたのです。

一緒にお風呂に入る度、その腕の中で過ごす時。

度々登場する温泉旅行の話題に、まだ当分先になるのだろうと想っていた私。

ですから予想もしていなかった展開に、無邪気に悦んでしまった私がいけなかったのでした。




「この日はどうですか?」

そう御主人様が指定をされたのは、以前から友達と会う約束をしていた日。

他の日が空いていないかどうか恐る恐る尋ねてはみましたが、お忙しい御主人様が首を縦に振られる筈はありません。

私にとって、御主人様より優先すべき事は何も無い。

それは非常に簡単な事で、選択する事すら無意味に感じられました。

友達に謝ろう…。日程が決まった事で、どんどんと計画を進められる御主人様。

「わくわく」という言葉そのままに、あっという間に航空券の手配まで済まされました。

それに合わせて、旅館を予約する私。

けれどもここで、再び御主人様が私の予定を確認されたのです。

この時どうして本当の事を言ってしまったのか…。

馬鹿な自分を酷く後悔しました。

けれど御主人様に嘘を吐く事等、私に出来るが筈ありません。

私は再度、友達との先約があった事を説明し、友達に謝って御主人様と温泉に行くとお話ししました。

すると御主人様は、この時初めてその事情を十分に把握された様子で…。

良く確認すれば良かったと、私に謝って来られたのです。

それは滅多に聞く事のない、御主人様からの御言葉。

私はそれが余りに悲しくて。

約束をしていた友達とは古い付き合いですし、事情を話せば理解をしてくれるだろう事は判っていました。

友達には本当に申し訳ないけれど、私はどうしても御主人様を優先したい。

私が予定を変更するから大丈夫ですと繰り返しお話をしたのですが、御主人様は既に温泉旅行の延期を決定されていました。

温泉はまた行けるのだからと。

友達との約束を守るようにと。

私はそれが悲しくて、悲しくて。

お顔からわくわく感の消えてしまった御主人様を見ながら、どうしようもなく泣きたくなっていました。

けれど。

尊敬する最愛の御主人様。

そこに寄り添う愛奴が、友達との約束を簡単に破るような薄情者で良いのだろうか…。

そう想った私は、御主人様の優しさを受け入れ、全ての予約をキャンセルしたのでした。




一緒に悦んだ気持ちがあっという間に萎んで、御主人様と私は手荷物検査場まで歩いて行きます。

酷く落ち込む私に苦笑いをされる御主人様は、ソファーに座って待っていた私の腕に、買って来た冷たい缶コーヒーを当ててわざとふざけて見せられるのです。

「元気を出しなさい」

がっかりしているのは、御主人様だって同じ筈なのに…。

ますます悲しく情けなくなる私は、作り笑いすらも出来ません。

そんな愛奴に、まるでご機嫌を取るような仕草で、冷えた二の腕をぷにぷにとつままれる御主人様。

本当なら余りの愛おしさにはしゃぎたくなる所ですが、拗ねた私はなかなか気持ちを立て直す事が出来なくて。

けれどこのまま離れたくはない。

そう想った私は意を決し、御主人様の優しさの勢いを借りて、いつもは言わない言葉を何とか吐き出しました。

「再来月は帰れますか?」と。




二度目の調教を計画している時。まだ御主人様というお人を良く理解出来ていなかった私は、調教を催促するような言い方をしてしまい、御主人様を怒らせてしまった事がありました。

御主人様は忙しいお方です。

そんな中でも私と過ごす時間を作って下さり、毎日必ず言葉を与えて下さいます。

だから私はいつも待つ方。

御主人様が求められる時を、只静かに。

日々、穏やかに待っているのです。

ですから自分から次回の調教について、言葉を発する事は殆どありません。

けれどこの時だけは。

このままの状態で御主人様のお傍を離れたくない。

そんな強い想いに背中を押され、絞り出すように言葉を吐き出したのです。

悪いのは私なのに。

一人で勝手に落ち込んでいる私を励ますように、直ぐに予定を確認して下さる御主人様。

「お前の誕生日の前日ですよ」

少し得意気で、意地悪な優しい眼差し。

愛おしい愛おしい私の御主人様。

次回の調教は、私の誕生日前日。

私の心をあっという間に掬い上げて下さった御主人様は、次回分の航空券を予約しておくようにとだけ言い残して歩き出されました。

今日は私がお見送りをする番。

何度も何度も振り返っては手を振って下さる御主人様。

その御姿が見えなくなるまで、私はその場に立ち尽くしていました。











明けましておめでとう御座います。

23度目の調教はこれにて終了となります。

秋からの忙しさと体調の悪さもあり、書きたい気持ちとは裏腹に年を跨いでしまいました。

今年は調教以外のお話も出来たらと思っていますので、また足を運んで頂けますと幸いです。




いつも当ブログに足を運んで下さり、ありがとうございます。

今年もどうぞ宜しくお願い致します。



愛奴



【 2020/01/08 00:04 】

リアル調教  | コメント(0)  |

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