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御主人様と愛奴 変態の日々の記録

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Author:愛奴
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15度目の調教⑨ ~愛奴の小さな成長~

御主人様に触れている腕の位置を少しずつずらしながら、私はその熱を自分の肌へと移して行きます。

そうしている間に、空港に到着したタクシー。

私が先程お渡しした封筒を取り出し、精算を済ませて下さる御主人様。

私はこの時もずっと迷っていました。

空港からであれば、御主人様に無理なく帰宅して頂く事が出来る。

もちろん少しでも一緒にいたいけれど、今はそれどころではない。

何より、御主人様が苦しい想いをされているのが耐えられない。

早く休んで頂きたい。

そう想いましたが、果たして私がそれを言ってもいいものなのか、判断がつきませんでした。

全ては御主人様が決定される事。

御主人様に早く休んで頂きたいと想うのは、もしかしたら私の我儘なのかもしれない。

もし今の状況があまりにも辛いものであれば、きっと御主人様が判断される。

私が提案する事は間違いなのかもしれない。

触れている腕は先程と変わらず熱を帯びているけれど、表情もお顔色も悪くはない。

やはり御主人様にお任せしよう。

色々な状況を考えた私は、時折、「大丈夫ですか?」と御主人様にお声を掛けながら、一緒に過ごせる残り僅かな時間を精一杯愉しむ事にしました。




空港内。

今日はいつもと違うお店に入り、御主人様と横並びに座って食事を取ります。

向かい合っているのもお顔が見えて嬉しいけれど、御主人様との距離が近いこの座り方が一番好き。

私はその一挙一動を見逃さないように、御主人様の様子を注意深く見守っていました。

食欲もあるようだし、笑顔にも無理をされている様子は感じられない…

私は持っていた鎮痛剤を御主人様にお渡しし、食後に服用して頂きました。




きっとその事で頭がいっぱいだったのでしょう。

食事を終えてエレベーターから降りた私は、御主人様のお姿を見失ってしまいました。

はぐれてしまったかと想い、慌てて今降りたばかりのエレベーターを覗き込んだ私。

けれどそこには誰もいない。

どうしようと振り返った所に、きょとんとしたお顔の御主人様がいらっしゃいました。

私が一人で考え事をしている間に、御主人様は他のお客さんに紛れてエレベーターを降りていらっしゃったのです。

お前は何をしているんだと言わんばかりの視線。

馬鹿な愛奴に呆れられている御主人様でしたが、その笑顔はとても優しいものでした。

良かった…ホテルを出た時よりも表情が明るい。

まだ解熱した訳では無い事をその手首で確信しながらも、ほんの少しお元気になられた様子の御主人様に安堵する私。

いつものように引き摺られながら、手荷物検査場近くのソファーへと移動しました。




御主人様は食後の一服へ。

私は一人、ソファーで待てをしながら、進む時計の針を睨み付けます。

やっと御主人様にお逢い出来たのに、もう離れなければならない。

いつもの事だけれど、今日は特に名残惜しい。

けれどやっぱり御主人様に早く休んで頂きたい。

その気持ちが強かった私は、いつものように見送りの時間まで一緒に過ごして下さった御主人様に感謝をしていました。

寂しいけれど寂しくない。

今日は駄々を捏ねずに出発しよう。

御主人様が元気になられる事以外に優先する事は何も無い。

そう一人で決意していると、御主人様が喫煙所から戻っていらっしゃいました。

迫る時間。

二人で時計を確認すると、さっきと同じようにソファーに横並びに座っていた御主人様が、私の目を見てご自分の唇をとんとんと指さされます。

今度は私がきょとんとする番。

…というより、かなり驚いていました。

手荷物検査場の近くには、たくさんの人がいる。

いつもならこんな状況であれば、御挨拶をする事は出来ません。

というより、御主人様がそれを望まれない。

私は周りに人がたくさんいようがいまいが、いつでも御主人様に御挨拶をしたい。

けれどそれをどうするかは御主人様が決められる事。

御主人様の御命令無しには、私は御挨拶をする事すら出来ないのです。

ですからいつもとは違う御主人様の行動に、私は酷く驚いて、どうしたらいいのか混乱していました。

その結果、「風邪が伝染ります…」と訳の解らない事を口走ってしまったのです。

それならばと、今度は唇の代わりに、ご自分の首筋を指さされる御主人様。

私はそれを見た瞬間、自分の発した言葉を酷く後悔しました。

せっかく御主人様が御命令して下さったのに。

身体が辛いのにも関わらず、私を見送って下さるのに。

今までの私なら、自分の発言に後悔したまま、ここで諦めていました。

けれど御主人様の前でだけは、ありのままの自分でいたい。

御主人様にだけは、私の馬鹿な所も汚い部分も、全てを曝け出していたい。

御主人様の愛奴として、自分を誤魔化す事は赦されない。

そう御主人様に躾けられている私。

物凄く恥ずかしいけれど、自分の気持ちをきちんとお伝えしなければ...!

そう強く想いました。

「口にします!」と勇気を振り絞って発言した私。

御主人様は黙って私の言葉を受け入れて下さいました。

何だかやけに緊張して、御主人様の唇を舐めさせて頂く私。

それはたった数秒の事。

けれど私にとっては、とても大きな一歩だったような気がしています。




私の挨拶を受け取った御主人様は、すっと立ち上がって歩き出されました。

私もその後に続き、御主人様のお傍を離れて手荷物検査へと歩き出します。

いつものように、私が見えなくなるまで見送って下さる御主人様。

駄々を捏ねなかった自分を小さく褒めながら、私は小さくなっていく御主人様に手を振りました。

離れたくないのはいつもの事。

それより何より、御主人様が辛い想いをされているのは耐えられない。

一瞬込み上げた涙をぐっと飲み込み、私は一人、真っ暗な空へと飛び立ちました。

御主人様が早くお元気になるようにと、闇の中に祈りながら。









15度目の調教はこれにて終了となります。

少し体調を崩していた為、せっかく取り戻した遅れは、また周回遅れとなってしまいました。

既に16度目の調教も終了しており、近々17度目の調教を受けに御主人様の元へ帰ります。

年末年始で少し遅れを取り戻したいところです。



いつも当ブログに足を運んで下さり、ありがとうございます。

16度目の調教も宜しくお願い致します。



愛奴




【 2018/12/09 01:15 】

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